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(2)女性が生き生きとした人生を楽しむためのコツ 倉敷平成病院婦人科部長 植田敏弘

植田敏弘氏

 生理になるとおなかが痛いなど不調を感じ悩んでいる方も多いのではないでしょうか。今回は、生理期間中に起こる“月経困難症”のホルモン療法に焦点を当ててお話しします。(生理を医学的に月経と言います)。

 月経困難症は「月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状」と定義されています。難しそうですが、ご本人が困っているならば“病的”と考えてください。では、どのくらいの方がこの月経困難症で悩んでいるのでしょうか?

 全体の約5割の女性が慢性の骨盤痛で困っていて、約3割の方が鎮痛剤などの医学的介入が必要であると言われています=図1

 また、月経困難症を放置すると、学校の成績低下、不眠症、仕事のパフォーマンスの低下、不妊症などさまざまな問題を引き起こします。その中の代表的な疾患である子宮内膜症は、さらにさまざまな病気につながることも分かってきています=図2

 ですから、痛みや出血などで困っているのならば、コツ(1) ちゅうちょせず早期に婦人科専門医にご相談いただき、月経困難症の治療を優先してください。

 では、その治療法についてお話しします。月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気に基づく“器質的”月経困難症と、そうではない“機能的”月経困難症に分類されます。優先順位は異なりますが、ホルモン療法は両者共に有効で、特に痛みや出血量の改善にはとても有効なことが分かっています。

 ただ、女性ホルモンのエストロゲン(E)には血を固まりやすくしたり、乳がんや子宮体がんを助長したりする可能性もあるため、エビデンス=図3=に基づいて、有益性と危険性のバランスを取りながら治療します。

 コツ(2) ご自身も食生活、運動などの生活習慣に気を付けたり、子宮がんや乳がん検診を受けるなどしてリスクを減らすように心がけてください。

 用いる薬剤は、皆さんが避妊薬としてご存じの“超低用量ピル”と同様の効果を持つ成分が配合された女性ホルモン配合剤(LEP)です。両者の違いは、ピルが避妊目的でつくられた薬剤であるのに対して、LEPは月経困難症治療の目的でつくられているということだけです。LEPは保険適応もされています。種類も豊富で、配合されたホルモンの種類によっては、ニキビや月経前緊張症(PMS)に効果がある薬剤も選択できます。

 また、喫煙者や40歳以上、高血圧など血栓症発症等のリスクが高いと思われる方には、Eを除したプロゲスチン製剤(ジエノゲスト)を用いて安全に治療することも可能です。とりわけ、経産婦の方で毎日薬を内服するのが苦手な方等には、プロゲスチンの染み込んだ小さな器具を子宮内に留置することで5年間効果が持続する子宮内システム(IUS/商標名ミレーナ)をお勧めすることもできます。

 コツ(3) たかが生理痛と軽視せず、婦人科専門医を受診して相談の上、ご自身に合った治療法を見つけ、一日でも早く人生の質(QOL)を高めてみられてはいかがでしょうか。

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 倉敷平成病院(086―427―1111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年04月02日 更新)

タグ: 女性倉敷平成病院

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