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(3)女性が生き生きとした人生を楽しむためのコツ~ワクチンで予防できる子宮頸がん 倉敷平成病院婦人科部長 植田敏弘

植田敏弘氏

 今回は公費助成(自己負担なし)が2025年3月末に終了する子宮頸(けい)がんワクチンキャッチアップ接種についてお話しします。「なんだ、まだ1年もあるじゃない」と思われるかもしれませんが、接種を開始してそのスケジュールを完了するのに計3回、6カ月間を要するので、実質今年の9月が接種開始期限となります。

 子宮で発症するがんには、子宮体がんと子宮頸がんの二つがあります=図1

 その一つである子宮頸がんは、子宮の出口付近である子宮頸部にできるがんで、発症が25歳から45歳の若い世代に多く、近年更に若年化してきています。ちょうど、学業や仕事、結婚、出産、育児など女性の人生に大きな影響を与える可能性があるのが子宮頸がんです。また、このがんは他とは異なる特殊ながんで、原因が男女間の性交渉で広がるヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが分かっています。

 ですから、ワクチンと従来の子宮がん検診を組み合わせることで、子宮頸がんは予防することができます。日本では毎年、約1万人の女性が子宮頸がんに罹患(りかん)し、約2800人が亡くなっています。また治療で子宮を失い、妊娠ができなくなってしまう方も1年間に約千人おられます。

 ただ、残念なことに日本では元々、子宮頸がんワクチンに対する認知度が低く、その接種が普及していなかったことに加え、2013年の副反応に関する国の専門家会議により予防接種対象者への積極的な接種勧奨が差し控えられたため、1997年度生まれから07年度生まれの方まで10学年がワクチン接種のチャンスを逃してしまいました。22年4月から再度ワクチン接種を積極的に勧奨し、更にワクチン接種のチャンスを逃してしまった方に公費でキャッチアップ接種の機会を設けました。その接種開始の期限が今年の9月になります。

 しかも、長年の情報の積み重ねによって、“子宮頸がんワクチン接種に関して報道されていたような「多様な症状」には因果関係がないこと”や“子宮頸がんワクチンには前がん状態の予防効果のみならず、がん自体をちゃんと予防できること”も分かってきました。定期接種、キャッチアップ接種にかかわらず接種対象の方で希望される方はワクチン接種の申し込みをし、忘れずに接種することをお勧めします=図2、3

 この3回シリーズが「女性が自分自身の人生を生き生きと楽しく過ごすコツを、他人任せではなく、自分自身の力で計画して、手に入れる」お役に立てたのならば、うれしく思います。

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 倉敷平成病院(086―427―1111)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2024年04月16日 更新)

タグ: がん女性倉敷平成病院

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