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(下)倉敷中央病院総合保健管理センター部長 前田亮

前田亮総合保健管理センター部長

先を考え30代から改善を

 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」と、日本乳癌(がん)学会「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン」を参照すると、日本人の生活習慣とがんの関連性がよく分かります。

 発症率が高くなっているがん、低くなっているがんがあることは、知っていただきたいです。感染症が原因となるがんは今後少なくなっていくと思われます。パピローマウイルスワクチン、ピロリ菌除菌の保険適用、肝炎治療の進歩・B型肝炎ワクチン接種により子宮頸(けい)がん、胃がん、肝臓がんは今後減少するでしょう。

 一方、生活習慣の変化・欧米化により肺がん、乳がん、結腸がんが増えています。対策には生活習慣の改善とがん検診が有効です。1個のがん細胞が、発見できる1センチのがんに成長するまで、およそ15年くらいの期間が必要とされています。いわゆるがんの潜伏期です。50代からがん年齢が始まることを考えると、30代半ばから生活習慣を改善しなくてはいけません。

 今は元気でも、体のどこかでがん細胞がじわじわ成長していることは覚悟しなくてはいけません。効率的ながん検診を含めた対策が必要です。

 ピロリ菌陽性なら除菌治療と胃カメラによる検診、愛煙家の方は禁煙と胸部CT・喀痰(かくたん)細胞診による検診、愛煙家で飲酒される方は内視鏡による食道・咽頭がんのスクリーニングが有効です。

 最近急増している乳がんは、日本人女性の14人に1人が罹患(りかん)すると言われています。家族にかかった人がいる方はかなりハイリスクです。運動や大豆は予防に効果があるとされていますが、ハイリスクの方にはマンモグラフィーと超音波併用検診が有効でしょう。

 健診で見つかる早期がんの比率は大腸がんで60%以上、胃がん・乳がんで70%以上に達し、早期がんの9割は治ります。ご自身の今までの生活状況などを考慮して生活習慣の改善と効率的ながん検診を受け、検診で要精検となった場合は必ず精密検査を受けることは、非常に重要なことです。

 がんで死なないためには1本目の矢として「生活習慣の改善」、2本目の矢として「定期的・効率的ながん検診」が挙げられます。がん治療は日進月歩です。不幸にして進行がんが発見されたとしても悲観的にならず、3本目の矢「がん治療の進歩」に期待してください。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年10月20日 更新)

タグ: がん倉敷中央病院

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