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松岡良明賞受賞 倉敷・松田病院院長 松田忠和氏に聞く 患者寄り添い治療

松田忠和氏

 肝臓病の専門病院として知られる松田病院(倉敷市鶴形)の松田忠和院長が、がん撲滅に貢献した個人、団体をたたえる山陽新聞社会事業団の第14回「松岡良明賞」を受賞した。肝臓がん治療35年のエキスパートである松田院長に、治療の現状や医師としての信念などについて聞いた。


 ―肝臓がんの予防、早期発見に向けて心掛けるべき点は。

 「肝臓がんは防げる病気。9割はB型肝炎、C型肝炎を原因として発病するため、定期的な健康診断などで早期に肝炎を見つけ、専門医による適切な治療を受ければいい。有効なインターフェロン治療への公的助成が昨年4月から始まっている。積極的に活用してもらいたい」

 ―発病後の治療法は。

 「肝細胞がん手術のほか、病巣を焼くラジオ波熱凝固療法、病巣に栄養を送る血管をふさぐカテーテル治療が代表的。肝臓に余力があるなら手術が最も有効だと考える。三次元画像診断や超音波システムなど最新機器の導入で、手術の安全性は飛躍的に高まった」

 ―地域に存在する病院としての役割も重要だ。

 「大病院は治療ガイドライン優先で動き、全体の方針に逆らうことは難しい。松田病院はいわば中小企業。だからこそ患者一人一人に柔軟に対応でき、信頼関係をはぐくみやすい。患者に寄り添い、根気よく治療に付き合うことが使命」

 ―医師としてのこだわりは。

 「1985年から2008年までに執刀した肝臓がん手術は512例で、5年生存率は64・6%。日本肝がん研究会全国集計を約10%上回る。年間50例の熱凝固療法、同400例のカテーテル治療も実質的に1人でこなす。経験に裏打ちされた自信と、何より大切なのは人の役に立ちたいという気持ち。1週間に5日は夜間に呼び出しが掛かる。体は正直きつい。ただ患者は不安があって当然で、院長が触診し『大丈夫ですよ』と声を掛けると安心感が違う」

  ―後進へのエールを。

 「『先生ありがとう。おかげでよくなりました』。その一言でどんな苦労も報われる。手術の技術向上は奥深く、終わりがない。私自身もまだ未熟。これからも腕を磨き、社会のために役に立ちたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年09月20日 更新)

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