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タンパク質が瞬時に抗原抗体反応 岡山大准教授が検出装置研究

テラヘルツ変換チップを用いた実験装置と開発した紀和准教授

 岡山大大学院自然科学研究科の紀和利彦准教授(電気工学)は、1兆ヘルツ前後の高周波電磁波・テラヘルツ波を発生する独自開発のチップを活用し、ウイルス感染などタンパク質の抗原抗体反応を瞬時に検出する装置の実用へ研究を始めた。検出時間を短縮することで、抗がん剤など医薬品開発の大幅なコスト低減が期待される。岡山市内の精密機器メーカーなど3社と共同で5年後の製品化を目指す。

 抗原抗体反応を生かした抗がん剤などの薬は、体内の特定の組織や細胞に働くことで高い効果や副作用軽減が見込まれるため近年、開発が活発化。だが、開発過程で多くの反応を調べる際、試薬や光照射による現行法では検出に6時間以上かかったり、時間を短縮すれば精度が低くなったりと、両立が難しい。

 紀和准教授はテラヘルツ波を活用した検出法に着目。開発した「テラヘルツ波変換チップ」(厚さ0・5ミリ、約15ミリ角)は半導体と絶縁体の二層構造で、チップにタンパク質を載せ、10兆分の1秒という瞬間的なレーザー光を断続的に当てて発生するテラヘルツ波の大きさでタンパク質の種類や状態を瞬時に特定し、高感度で抗原抗体反応が検出できるという。既に実験装置で十分な精度を確認し、特許を取得済み。

 3社との共同研究は、岡山県工業技術センター(岡山市北区芳賀)が仲介。今後、装置の小型化や使いやすさなど製品化に向けた取り組みを加速させる。紀和准教授は「装置は、がんやリウマチの薬の開発に活用できるほか、がんの早期診断にも役立てられる。地元チームの力で先端的な製品を全国に発信したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年11月13日 更新)

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