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小児がん新診断法開発 岡山理科大 微生物使い迅速に 製品化狙う

三井亮司准教授

 岡山理科大理学部の三井亮司准教授(応用微生物学)らの研究グループは、小児がんの一種、神経芽腫を微生物を用いて低コストで迅速に診断する方法を開発した。2年以内をめどに、診療所や家庭でも使える検査キットの製品化を目指す。

 神経芽腫は患者の尿に過剰に分泌される代謝物質バニリルマンデル酸を試薬や光学的な機器を用いて検出し診断しているが、試薬の精度の低さや機器が高額で一部の医療機関にしかないことがネックになっている。

 三井准教授らは、土中にいる微生物の一種、ロドスポリジウムがバニリルマンデル酸を分解することを発見し、分解をつかさどる酵素を抽出することに成功した。この酵素を含む試薬と患者の尿を混ぜると、発色の濃度でバニリルマンデル酸の量を1、2分で正確に測定でき、診断できるという。検出法は特許を出願している。

 酵素は遺伝子組み換えした大腸菌を使って安価で大量に作れ、試薬を紙に染みこませた検査キットを製品化すれば、小規模な医療機関や家庭でも簡易検査が可能になるという。

 三井准教授は「専門医や企業の協力を得て、新技術を広く活用できるようにしたい」と話している。


画期的な成果

 稲垣賢二・岡山大大学院自然科学研究科教授(生化学)の話 特定の物質に反応する酵素の特徴をがんの診断に生かした画期的な成果。遺伝子工学を活用することで実用化が十分に期待できる。


ズーム

 神経芽腫 副腎や交感神経節に発生する腫瘍(しゅよう)で、自然治癒する例も多いが悪性化して死亡することがある。国は1984年から6カ月児の集団検診を行い、約6000人に1人の割合で患者を確認していたが、良性腫瘍の子どもが無用な治療を受ける危険性を考慮して2004年に中止した。京都府、札幌市など独自に1歳6カ月児検診をしている自治体もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年01月07日 更新)

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