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超音波診断 患者動いても…常に画像ずれ補正 岡山理科大・木原教授が技術開発

肝臓のラジオ波焼灼治療中の超音波2次元画像(上)と3次元イメージ(下)。内側の円で患部、外側の円で加熱する範囲を示している=森安教授提供データを使用

木原朝彦教授

 岡山理科大工学部生体医工学科の木原朝彦教授(医用3次元画像処理)は、超音波(エコー)画像診断で特定の断面画像をモニターに映し出す際、患者が動いたり、診断に使う装置を当てる位置がずれても画像を補正し、常に同じ断面を表示する技術を開発した。医師にとっては治療がしやすく、治療前後の画像を正確に重ね合わせることで成果の確認も容易という。今秋にも医療機器メーカーが実用化する見通し。

 超音波画像診断では、3次元画像がリアルタイムで得られる装置が普及しつつあるが、医師は診断や治療の際、患部が最も確認しやすい2次元の断面画像を使用することが多い。ところが、患者の呼吸や動きに影響を受け、同一断面を映し出すのは難しかった。

 木原教授は、装置は常に3次元の立体データを撮影して蓄積している点に着目。治療の前後で別々に、あるいは治療中連続的に得たデータを基に、撮影個所や撮影位置のずれを自動的に計算、補正して2次元の同一断面を表示させるようにした。

 実用化されるのは、肝臓がんのラジオ波焼灼(しょうしゃく)治療に使う機器。電極が付いた針を肝臓の腫瘍(しゅよう)に刺し、加熱して凝固させる際、患者が動くなどしても同一断面を映し続ける。さらに、患部の位置や加熱範囲を円で示すことができるため、治療の精度も高まるという。

 CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)に連動させて同一断面をより詳しく確認することも可能で、木原教授は「病変の経時変化や治療の効果判定など、さまざまな場面に活用の幅を広げたい」としている。

 森安史典・東京医科大病院消化器内科主任教授の話 ラジオ波焼灼治療で焼灼領域を決めるとき、判断に迷うことがなくなる。手術の際、目視できない患部の位置をナビゲーションするなど、技術の応用に臨床医の期待は大きい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年03月09日 更新)

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