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吉備中央・希望学園創立10年 不登校児らを受け入れ成果  卒業生延べ100人超 経営 補助金頼りで綱渡り

創立10周年記念の学校公開では、ユニークな教育システムの実態を保護者らが視察した=5日、吉備高原のびのび小学校

 自然の中での集団生活を通じ、不登校など学校不適応の子どもたちの自立を目指す吉備高原のびのび小学校(吉備中央町高谷)、吉備高原希望中学校(同所)を運営する学校法人・おかやま希望学園が創立10周年を迎えた。小中一貫の全寮制教育や独自カリキュラムの実践は、保護者や行政から高い評価を受けている。一方、経営面では、補助金や寄付金に頼る苦しい状態が続いている。

 今月五日、十周年を記念し、のびのび小、希望中の一般公開、授業見学会が開かれた。山あいの学校に、保護者や入学希望者、教育関係者ら七十五人が訪れて、元気に授業を受ける子どもたちの様子を熱心に視察した。

 発達障害のある小学校五年生の娘を入学させた父親(44)=神戸市=は、「都会の学校とは違い、ストレスのない環境で授業を受けている娘の姿を見て安心した。こういう学校があって本当によかった」と話す。

小中一貫の教育

 旧加茂川町立津賀西小学校(一九九〇年閉校)の跡地に、のびのび小が開校したのは一九九五年。二〇〇〇年には隣接地に希望中も開校し、現在、県内や関西、中四国地方などから編入学した小学生十四人、中学生二十五人が学んでいる。これまで延べ百人を超える卒業生を送り出した。

 最大の特徴は、全国的に珍しい小中一貫の全寮制教育。寄宿舎では、不登校児をはじめ、注意欠陥・多動性障害(ADHD)など軽度発達障害のある子どもたちが共同生活を送っている。

 学年の枠を取り払った「無学年制」も独自のシステム。学年の代わりに、竹細工や草木染めに挑戦する「里山文化研究所」(小学生)や、奉仕活動に取り組む「ai学級」(中学校)など、各自が興味を持った総合学習のテーマごとにクラスが編成されている。

 横浜市から希望中に転入して三年目になる森ゆかりさん(14)は「友達と一緒に過ごす時間が長くなり、本当に親しい人間関係が築けるようになった」と話す。

文科省も評価

 ユニークな教育システムは文部科学省からも評価され、昨年度は独創的な教育を行う私学を支援する「教育改革推進モデル事業」の指定校となった。本年度から三年間、学習指導要領によらない独自のカリキュラムが組める「研究開発学校」にも選ばれ、動物との触れ合いや自分史づくりに取り組む「生き方科」を導入している。

 井上昭三学園長は「生き方科の狙いは、各自の取り組みを通じて人生を見つめ直すこと。それぞれの課題を克服しながら、よりよい生き方について考えを深めてほしい」と期待を寄せる。

PRの余裕なし

 しかし、学園の財政面は苦戦が続いている。年間運営費約一億円のうち、半分以上の約五千六百万円は県や国の補助金、さらに約四百万円の寄付金で穴埋めし、ようやく維持している状態。経営を安定させるには、小・中学校合わせて五十人規模にしたいというが、PRに予算を割く余裕がなく、実現への道のりは険しい。

 永井一夫理事長は「不登校問題は依然として深刻で、受け皿として全寮制施設の必要性は高い。研究開発学校の指定などで目に見える成果を上げ、補助金の継続、児童・生徒数の増加につなげたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月17日 更新)

タグ: 健康福祉子供医療・話題

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