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第23回 岡山県精神科医療センター 救急治療 入院の長期化防ぐ 不安和らげ信頼関係結ぶ

症例検討会に臨む来住医療部長(中央)らスタッフ

 自殺を図った、列車など公共の場で混乱した…。

 県精神科医療センターが土日曜や夜間など時間外に受け入れた救急件数は、二〇〇七年度三百三十八件。岡山県内の精神科救急全体の72・5%を占める。

 「入り口できちんと対応し、病気が慢性化して入院が長期化しないようにすることが大切」と高橋正幸救急病棟医長は強調する。

 「スーパー救急」と呼ばれる通常より二倍高い診療報酬が得られる指定を、県内の精神科で唯一取得。医師、看護師を多く配置し、平均在院日数は一九九七年度の百六十七日から〇七年度は六十九日と大幅に短縮した。

 救急は、患者自身が混乱して病気と認識せず、納得しないまま強制入院となる例が多い。妄想や幻聴などに襲われた患者の不安を和らげつつ、治療に前向きに取り組んでもらえるように信頼関係を結ぶことが大切だ。

 患者の75%は百日以内で退院するが、それを過ぎると長期化する傾向がある。病気が慢性化しやすい点が一因。加えて、スーパー救急でも「一般科並み」という精神科の診療報酬の低さから人の配置が不十分だったり、家庭に戻すための家族との調整の難しさ、福祉サービスの貧困さが背景にある。

 退院に向けた環境調整を図る精神保健福祉士(PSW)は現在八人で、決して多くなく、「地域の福祉サービス機関と連携を深めていくことが課題」とPSWの青木博美さん。

 患者と家族の関係も退院の鍵を握るため、初めての入院ケースでは病気(統合失調症)に関する勉強会を患者、家族それぞれを対象に開催。 来住 ( きし ) 由樹医療部長は「精神疾患は誰にでも起こりうる。回復する病気だということを伝え、理解してもらいたい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年07月22日 更新)

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