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第29回 金田病院 脳梗塞治療 患者受け入れ迅速化 tPA投与増え効果

患者のMRI画像を検査スタッフと検討する木下医長(左端)と遠部副院長(右端)

 「左の手足がしびれて動かない」。新見市の八十代男性が二月中旬、救急車で金田病院に運ばれてきた。二時間前に自宅で異変を感じたという。救急車で行った同市内の病院で専門的治療が必要とされ搬送されてきた。

 脳神経外科の遠部英昭副院長と木下公久医長は診察やMRI(磁気共鳴画像装置)検査の結果、脳の血管が血の塊(血栓)で詰まる脳梗塞と診断。病院到着から五十分後には血栓を溶かす薬・tPAを注射で投与し始めた。症状は次第に回復。男性はリハビリ後の三月下旬、軽いまひは残ったが、自分の足で歩いて退院できた。

 真庭市で唯一、脳神経外科医が二人常勤する同病院。年三十―四十人に上る救急搬入の脳梗塞患者の受け入れ体制を昨年充実、整備。今年七月に岡山県保健医療計画で脳出血、くも膜下出血を合わせた脳卒中の超急性期の専門的な診療が二十四時間可能な医療機関に位置づけられた。こうした病院がない新見市からの受診も多い。

 きっかけは二〇〇五年、積極的な治療法が乏しかった脳梗塞でtPAに健康保険が適用されたこと。ただ、発症から時間がたって使うと脳出血の副作用を招く恐れがあり、投与は発症三時間以内に限られる。治療の迅速化が急務となった。

 夜間や休日は救急搬送の連絡を受けた看護師が当直医の判断を待たず遠部副院長、木下医長や検査スタッフを呼び出すなど患者到着前に脳卒中チームがそろう体制を整えた。さらに、救急総括医長を兼ねる木下医師が真庭、新見市消防本部で勉強会を重ね、速やかな搬送を呼び掛けた。

 その結果、救急搬送された患者のうち、発症二時間以内の来院が半数近くに達し、搬入から治療開始までも一時間以内に短縮。患者の5・0%だけだったtPAの使用は28・0%に増えた。これまで投与した十八人のうち、五人はほぼ症状がなくなるまで劇的に回復。四人は軽いまひが残ったが、介助なしで日常生活を送れている。

 九人は寝たきりなど重い障害が残ったものの、「亡くなったり、副作用の出た患者はいない」と遠部副院長は効果を説明。「地域向け啓発活動を今後、さらに広げたい」と語っている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年09月30日 更新)

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