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第31回 岡山中央病院 循環器センター 動脈硬化早期に検出 心筋梗塞治療に効果

岩崎センター長(右端)による心カテーテル治療(岡山中央病院提供)

岩崎孝一朗センター長

 二〇〇六年にセンターを開設。循環器内科と心臓血管外科があり、一般病床三十六床、重篤な心疾患の全身管理を二十四時間行うICU・CCU(冠疾患集中治療室)を六床備えている。

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 「心臓のCT(コンピューター断層撮影装置)は六十四列のMDCTを導入しており、冠動脈の造影(カテーテル検査)と同じぐらいの画像を得ることが可能だ」と岩崎孝一朗センター長。早期の動脈硬化を検出できるのが特徴。約三十分で解析できるため、検査当日に結果を知ることができる。

 MDCTは一回転する間に六十四枚の断面画像を撮影し、冠動脈の血管内を映す。内膜に蓄積した動脈硬化の塊・プラークを見ることが可能だ。岩崎センター長は「MDCTで冠動脈に異常がなければ、カテーテル検査の必要がない。また、MDCTと心臓超音波検査で心臓の病気はほとんど分かる」と説明する。

 さらに、「急性心筋 梗塞 ( こうそく ) を起こす冠動脈 狭窄 ( きょうさく ) の大部分が中等度の狭窄であることが分かってきた。これまでの運動負荷心電図や負荷心筋シンチではこうした狭窄の検出は不可能。MDCTで動脈硬化の有無が分かる」とメリットを示す。

 自覚症状はなくても、高血圧、高脂血症、糖尿病などのリスクファクターがある人四百人にMDCTを行った結果、43%で冠動脈プラークを検出した。糖尿病の場合は85%にあった。

 心筋梗塞の予防には、冠動脈のプラークを発見することが有効であることから、MDCTを取り入れた心臓専用のドックを行っている。

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 急性心筋梗塞などに対応できる体制をとっている。カテーテル検査で高度の狭窄がある場合、カテーテル治療を行う。岩崎センター長は五千例以上の治療実績がある。

 治療はステント植え込み術が主。最近は再狭窄を防ぐ薬を塗った「薬剤溶出性ステント」により、従来の一年以内20―30%の再狭窄率が、センターでは2%となった。これは、血管内エコーを補助的に使って治療していることも大きく影響している。動脈硬化の程度や狭窄の長さなどを正確に測り治療しているのだ。

 冠内圧測定は千二百例ある。これにより冠動脈狭窄を適切に評価でき、不要なカテーテル検査をしなくてすむ。

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 センターは学会発表や論文発表を意欲的に取り組んでいる。岩崎センター長はカテーテル検査・治療の本を今年、米ニューヨークの出版社から出す予定。こうした治療、研究の実績から、米国の紳士録「マークィーズ・フーズ・フー」に掲載された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年10月21日 更新)

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