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岡山県北医療の現状、課題は 津山中央病院名誉院長・徳田 直彦さんに聞く

 とくだ・なおひこ 1969年、岡山大医学部卒。岡山大医学部付属病院第1外科などを経て、79年に津山中央病院外科部長、97年に副院長。高梁市出身。津山市上河原。65歳。

 津山中央病院(津山市川崎)の院長を7年間務め、3月末に退任した。4月からは同病院で一人の外科医として患者と向き合いながら後進の指導に当たっている。30年以上、県北医療の最前線を見てきた徳田さんに現状や課題を聞いた。

 ―1977年、外科副部長として着任。99年に病院は現在地へ移り、県北唯一の「地域がん診療連携拠点病院」、重篤な患者を常時受け入れる「三次救命救急センター」に指定され、県北医療の中核を担っている。

 かつては手術設備が整わず、受け入れ先の県南にある病院のベッド待ちの間に患者が亡くなるケースもあった。「何とか津山で手術を」「全国レベルの医療を」と必死で最先端の医療機器を導入し、人材確保にも努めてきた結果だと思う。

 ―津山中央病院には救急患者が殺到。救急外来は年間3万人以上と聞く。

 一極集中は決して良い状態ではない。医療機関の偏在や医師不足は大きな問題だ。そもそも日本の医師数はOECD(経済協力開発機構)加盟の先進30カ国平均の3分の2と、全然足りない状況。ただ「県北の病院は忙しく、きつい」と悪いイメージばかりが独り歩きすると、かえって医師のなり手が減る。津山中央病院には全国水準の機器があり、経験豊富な各分野の医師もいる。向上心のある若い医師には腕を磨く絶好の職場となることも知ってほしい。

 ―患者らには何ができるのか。

 津山中央病院の救急外来は4割が不要不急の軽症患者で、業務が圧迫されている。医師が働き続けられるよう、医療機関と地域の方々、行政、メディアが現状を理解し、支援してほしい。

 ―自身は胃がんや大腸がんなど消化器がん手術の実績が3千例に迫るベテラン。4月から名誉院長に就任したが、今の勤務内容は。

 一外科医として週に5日ほど出勤している。若手医師に教える時間が増えたので、回診時や術前・術後に、できるだけ多くディスカッションしている。

 ―長年、医師として大切にしていることは。

 患者との信頼関係だ。「昨晩の熱はどうですか」「ここの痛みは大丈夫ですか」という一言でまるで違ってくる。手術も数をこなすだけでなく、いかに出血を少なくするかなど合理的に考え、効率的に執刀することが患者の負担軽減につながる。

 ―医師とはどんな仕事か。

 荷物をまとめて命懸けで入院した人が、回復して帰って行く姿が見られる上に、感謝してもらえる。医師や看護師らが一丸で取り組み、チームとして達成感も共有できる。これほどやりがいのある仕事はない。今は若い医師が伸びてくれるのがうれしく、生きがいになっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年05月12日 更新)

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