透析患者向け料理 岡山の2人が上位独占 グランプリ・宮本さん(岡山) 準グランプリ・高岸さん(新見) ラーメンもOK
【写真左】グランプリの宮本さん【同右】準グランプリの高岸さん
グランプリに輝いた宮本さんのメニュー(左から)「赤カブのミルフィーユ(ユズ風味)&岡山地鶏のつくね」「日生産カキのマカロニグラタン」「米粉のロールケーキ」
準グランプリを受賞した高岸さんのメニュー。(左から)「五目ラーメン」「揚げギョウザ」「卵チャーハン」
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宮本さんは、昨年亡くなった実母・操さんの思い出の味を、日生産カキなどを使って透析食として再現した。
高校生のころ、塾や部活から帰ると、必ず手料理で迎えてくれた操さん。中でも記憶に残るのが、寒い日に食べたグラタンの味。「熱々のグラタンが口の中でとろりと溶け、冷えた体だけでなく心まで温まった」と振り返る。
楽しそうに台所に立つ母を見て育ち、料理が好きになったという宮本さんだが、10年前、他の病気をきっかけに慢性腎不全となり透析生活となった。
「仕事も続けられなくなり、随分落ち込んだ」。人と会うのが嫌になったこともある。患者仲間と交流する中で、次第に気持ちが前向きに。「旅行したり、仕事を頑張ったり、透析を受け入れて人生を楽しむ皆さんから勇気をもらった」
立ち直る中で、料理を思い出す。減塩、リン・カリウムのコントロールなど、透析患者の食生活には制約が多いが、「工夫も料理の楽しみ」と、日々知恵を絞りながら料理に取り組んでいる。
コンテストの挑戦は今回が初めて。テーマは地産地消。グラタンには低リンミルクを活用。つくねに、カリウムが少ない岡山産黄ニラを使うなどの工夫も評価された。
現在、県腎臓病協議会の事務局長。患者向けの料理講習会に力を入れている。「食生活が向上すれば生きる力も沸いてくる。これからも手軽でおいしい健康メニューを提案していきたい」
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「ラーメンは食べたいけど、体に悪いんじゃろう」。高岸さんのメニューは、透析仲間のつぶやきから生まれた。
新見市でラーメン店を開業して28年。16年前に慢性腎不全で透析生活に入ってからは味見も難しくなり、家族の舌を頼りに自慢の味を守ってきた。
「透析していても食べられるラーメンを作れば」。昨年夏から開発に取り組んだ。
体内の過剰な塩分を尿として排出できない透析患者にとって塩分は敵。めんは通常、小麦粉に食塩を加えて練ることで、弾力やつるつるとしたのどごしを出すが、高岸さんはめん生地をローラーで念入りに延ばすことで、塩分ゼロの自家製めんづくりに成功する。
スープやチャーハンの味付けは、減塩だし割りしょうゆを使用。野菜類も一度ゆでこぼすことでカリウムを減らした。
ややあっさりのしょうゆ味。めんの歯ごたえものどごしも、普通のラーメンと変わらない。透析仲間に「できたよ」と伝えると、すぐにやって来てスープまで飲み干したとか。
今月から、店のメニューに登場した。「五目ラーメン」は、塩分ゼロのめんにちなんで「ドリームゼロラーメン」(600円)と命名。揚げギョウザと卵チャーハン付きのセット(700円)も人気という。
今回のコンテストを機に、自身の食生活も見直した高岸さん。「減塩など心掛けると、体が楽で疲れなくなりました」と、思わぬ“副産物”に笑顔を見せる。
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宮本さんと高岸さんのメニューのレシピは、バイエル薬品のホームページのサイト(http://chojurin.jp/contest/index.html)に詳しく紹介されている。
(2010年05月23日 更新)