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高機能透析器向け「中空糸膜」 玉島工場に製造拠点 クラレメディカル

クラレメディカルが整備した新しい中空糸膜の製造拠点

 合繊大手・クラレ(大阪市)の子会社で、医療器材製造販売のクラレメディカル(倉敷市酒津)は、糸の表面に穴を開けた繊維「中空糸膜」の製造拠点を倉敷事業所玉島工場(同市玉島乙島)に整備した。高機能型透析器「エバブレンEK」用に開発した中空糸膜を年約120万本生産する。総投資額は約20億円。

 透析器用の中空糸膜は、表面にナノメートル単位(ナノは十億分の一)の微細な穴が多数ある直径約〇・三ミリの中空糸を約一万二千本束ねて造る。中空糸はストロー状になっており、中心の空洞部分に血液を通し、尿毒素など血液中の不純物を取り除く。

 開発した中空糸膜は、糸の微細な穴を従来製品に比べて少し大きくすることで、尿毒素に加え、有害タンパク物質の除去性能を向上させた。同物質の代表格・β(ベータ)2ミクログロブリンの除去能力は、一分当たり五十六ミリリットルと従来(十五~二十ミリリットル)から大幅に増えた。

 新しい中空糸膜の原料はクラレが事業化したエバール樹脂で、通常型の透析器で使用されている血液凝固防止用の添加剤が不要。このため「添加剤の成分が血液中に溶け出す懸念がなくなるのがメリット」(クラレメディカル)という。同社によると、高機能型透析器は血中に有害タンパク物質が多い透析患者が使用対象。国内の透析器市場は、約40%が同物質除去機能が高い透析器が占め、今後も需要拡大が見込まれている。

 玉島工場内の中空糸膜製造拠点は、未使用だった鉄骨平屋(約千八百平方メートル)を改装。乾燥装置やタンクなどの設備を導入。ちりやほこりを極力排除したクリーンルーム(約五百平方メートル)も整備した。

 生産した中空糸膜は、エバブレンEKを共同開発した医療機器・医薬品製造販売の川澄化学工業(東京)の三重工場(大分県豊後大野市)で製品に組み立てる。

 クラレメディカルは、倉敷事業所倉敷工場(倉敷市酒津)で、主に透析器に用いる中空糸膜を年約二百八十万本生産。同膜の売り上げは約八十億円(二〇〇五年三月期)。新しい中空糸膜の売り上げ目標は公表していない。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年12月09日 更新)

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