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インスリン調節酵素発見 岡山大大学院富澤助教授ら  糖尿病の新治療法に期待

富澤一仁助教授

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の富澤一仁助教授(細胞生理学)と魏范研大学院生らのグループは、血糖値を下げるインスリンの分泌量を調節している酵素が、膵臓(すいぞう)細胞内にあることを発見した。この酵素の働きを抑制すれば高血糖時にだけ多く分泌させることが可能なことを実験で確認。肥満や生活習慣に関連しインスリン分泌低下が主原因となる2型糖尿病患者の新たな治療法の確立につながると期待される。

 富澤助教授らは、脳の神経細胞内に多く存在しアルツハイマー病に関係があるとされる酵素「cdk5」が、膵臓のベータ細胞内に微量にあることを見つけ着目した。

 マウス実験では、遺伝的にcdk5が機能しないマウスのインスリン分泌量は、血糖値が正常な状態では普通のマウスと変わらなかったが、高血糖の状態では二倍に上昇した。

 cdk5の調整メカニズムも解明した。膵臓のベータ細胞はカルシウムが多く流入するとインスリンを分泌。cdk5はカルシウム流入量を調節し、その働きを抑制すればより多くのインスリンが分泌される。ベータ細胞はブドウ糖を取り込まないとインスリンを分泌しないため、高血糖時にだけ働く。

 国内の糖尿病患者は八百万人を超えるとされ、大半の2型糖尿病患者は年々増加。しかし、現行の治療薬は血糖値に関係なくインスリン分泌を促すため低血糖によるふらつきなど意識障害を起こす例も見られ、問題となっている。

 研究成果は米科学誌「ネイチャーメディシン」に掲載された。グループはcdk5の働きを阻害する治療薬を開発し特許申請。富澤助教授は「今後は臨床試験を通じ、糖尿病治療に結びつく薬の実用化につなげたい」と話している。


画期的な成果

 北海道大学大学院薬学研究科・鈴木利治教授(神経科学)の話 神経で特異的に働くcdk5がインスリン分泌の調節機能を持つことを突き止めたのは画期的。副作用などのない投薬に道を開く成果だ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年12月27日 更新)

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