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血液細胞侵入、がん死滅 世界初確認 林原生化研 新治療開発に期待

ホゾティが侵入したがん細胞=林原生物化学研究所提供

 林原(岡山市北区下石井)グループの林原生物化学研究所(同)は15日、血液細胞が、がん細胞に侵入し死滅させる現象を世界で初めて確認した、と発表した。新たながん治療につながる可能性があり、22日から大阪市内で開かれる日本癌(がん)学会学術総会で発表する。

 血液細胞は、同研究所が2006年に発見し「HOZOT(ホゾティ)」と名付けた免疫細胞のT細胞。ヒトの臍(さい)帯血の白血球から独自技術で培養する。

 同研究所基礎細胞研究部門の竹内誠人主任研究員によると、ホゾティは積極的にがん細胞に近づき、内部に侵入。ホゾティが死んでいく際、細胞にダメージを与える数種類のタンパク質を放出し、がん細胞を死滅させる。

 がん細胞内で死んだホゾティの割合が高いほど、がん細胞の生存率が低下することも確認。ホゾティが侵入する割合は乳がんで20%、胃がんや大腸がんで十数%に上るが、正常細胞にはほとんど入り込まないという。

 細胞が別の細胞に侵入する現象はすでに報告されているが、がん細胞を選んで入り、死滅させる現象は確認されていなかった。竹内主任研究員は08年8月、研究過程でホゾティが内部に入ったがん細胞を発見した。

 抗がん作用を持つ免疫細胞としての利用や、がん細胞に抗がん剤を直接運ぶ治療法の開発が期待でき、同研究所は「なぜがん細胞を選んで入っていくのかなどを解明し、早ければ5、6年後にも臨床実験のめどを立てたい」としている。

新たなメカニズム

 垣内史堂・東邦大医学部名誉教授(免疫学)の話 これまでにない抗腫瘍(しゅよう)免疫メカニズムだ。研究は始まったばかりだが、今後の展開を期待している。新しい治療法につながる可能性もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年09月16日 更新)

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