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独居高齢者の不安解消「いのちのバトン」広がる 笠岡、井原など4市導入 医療情報を冷蔵庫に保管

笠岡市社会福祉協議会が高齢者らに配布した「いのちのバトン」

 高齢者の既往症やかかりつけ医といった情報を記載した用紙を専用カプセルに収め、どの家でも分かりやすいように冷蔵庫で保管して急病時に救急隊員らに伝える取り組みが県内で広がっている。カプセルの形状から「いのちのバトン」などと呼ばれ、高齢化の進展などを背景に笠岡、井原など4市が導入。身寄りのない高齢者らの不安解消に一役買っている。

 円筒形のカプセルに名前や生年月日、既往症や緊急連絡先などを書いた用紙を収納。駆け付けた救急隊員らは冷蔵庫のカプセルで必要な情報を得て、スムーズな対処に結び付ける。東京都港区が2008年5月に全国で初めて導入し、各地に広がっている。

 県消防保安課によると、高齢化に伴い65歳以上の救急搬送者数は増加傾向で、県内の2009年の搬送者約6万9千人のうち高齢者は約3万6千人と5割以上を占めている。一方、過疎や地域コミュニティーの希薄化などで、高齢者が倒れた場合に必要な情報が救急隊員や医療機関に伝わりにくいといったこともカプセル導入の背景にある。

 県内の各自治体や社会福祉協議会(社協)によると、県内では昨年6月に始めた井原市が最初で、笠岡、瀬戸内、真庭の計4市が市内全域または一部で導入。備前、浅口、高梁市、勝央町などで取り組みを検討している。

 笠岡市では昨年10月、市社協新山支部がカプセルを「いのちのバトン」(高さ17センチ、直径6センチ)と命名し、地区の75歳以上の一人暮らしの高齢者らに配布。以降、対象を広げ、市社協が今年9月末までに市内全域の約1600世帯に配布した。

 「万一、話ができない状況になっても必要事項が確実に伝えられる。離れて暮らす息子たちも安心する」と吉岡節子さん(81)=同市新賀。笠岡地区消防組合によると、これまで救急搬送した6世帯にバトンがあり、「既往症などが分かり、いずれも迅速な対応ができた。救命率も高まるだろう」と効果を強調する。

 井原市では、市社協が「はーとふるカプセル」(高さ21センチ、直径6センチ)の名称で65歳以上の独居高齢者らに配布。市の補助金も活用し、約2600世帯に届けた。

 笠岡市社協の柚木義和事務局長(61)は「取り組みがさらに広がり、行政や民生委員、消防関係者らがかかわって高齢者を支えるネットワークが構築されることに期待したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年11月09日 更新)

タグ: 高齢者医療・話題

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