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「自閉症」の現状は? 岡山県育てる会・鳥羽美千子代表に聞く 不足する療育施設 支援法の中身充実が急務

鳥羽美千子氏

 脳の発達障害によってコミュニケーションがうまくとれず、多動であったり、突然パニック状態に陥ったりする自閉症。昨年4月、発達障害者支援法が施行され、早期発見・療育、一貫した支援態勢の整備へ取り組みが始まった。21日に川崎医療福祉大(倉敷市松島)で自閉症療育の特別公開講座が開かれるのを前に、NPO法人・岡山県自閉症児を育てる会の鳥羽美千子代表(53)=赤磐市和田=に現状を聞いた。

 ―自閉症の発症率は。

 「百人に〇・九人程度と言われ、決して少ない数ではない。かつては『しつけが悪いから』『愛情不足のため』などと言われ、悩み、苦しむ保護者は多かった。最近はマスコミなどでよく取り上げられるようになり、さすがにこうした誤解、偏見は少なくなったが、全くなくなったわけではない」

 ―発達障害者支援法をどう受け止めている。

 「行政の責任で早期発見・療育と各種のサポートを行うとする支援法は身体、知的、精神の三つの障害の陰に隠れていた自閉症に光を当てた。ただ今のところ理念法にとどまっている。保護者や教員、療育者など自閉症にかかわる人たちはいろいろ意見を出し合って、中身を充実させていかねばならない。例えば、早期発見には健診時の医師、保健師の役割が重要だが自閉症について十分に理解している医師、保健師はまだ少ない。また早期発見されて療育ということになっても、現状では自閉症に対するノウハウを持つ療育施設はどこもいっぱいで行く所はない」

 ―国は知的に問題のない高機能自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)など、自閉症とよく似た障害のある子どもたちも含めて特別支援教育を打ち出している。

 「コーディネーター役の教員が専門家チームと組み、自閉症児一人一人の教育ニーズを把握して指導や支援を行う試みで、二〇〇七年度から正式にスタートする。保護者は大きな期待を持って見守っているが、問題はどれだけの予算が計上されるか。県内で試行されたモデル事業ではコーディネーター役の教員は兼任で、現状で手いっぱいの仕事を抱えている中、新たな役割を担って大変だったようだ。教育の成果を上げるには、カギを握る専門のコーディネーターを確保しなければならない」

 ―「育てる会」はどんな活動を。

 「一九九七年に五人の母親で結成した会が母体。二〇〇〇年にNPO法人を取得し、子どもたちの社会での自立を目指し、米国ノースカロライナ大学で創設された自閉症児の療育プログラムTEACCHを基本に活動している。児童デイサービス事業のほか電話相談、支援者養成セミナー、ボランティアの研修などを行っている。自閉症児にはライフステージを通して周囲の支援が欠かせず、そのために障害の特性を広く理解してもらう活動にも力を入れたい」
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年01月18日 更新)

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