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重い脳障害 早期に低温治療 救急車内で「咽頭冷却」

武田吉正講師

救急車や心肺蘇生現場への携帯を可能にした咽頭冷却装置(大研医器提供)

 岡山大病院の武田吉正講師(麻酔・蘇生学)らの研究グループは今春までに、重い脳障害を受けた患者の脳を冷やして神経細胞を保護する「脳低温療法」の一つで、頸(けい)動脈が通るのどを集中的に冷やす「咽頭冷却」を救急車内で行う臨床研究を始める。主に病院内で行われている療法だが、冷却装置を小型化し可能になった。搬送時から早期に冷やすことで、高い保護効果が得られると期待されている。

 咽頭冷却は、冷却水が循環するチューブを口から挿入し、咽頭や食道入り口付近に固定。脳に向かう血液を冷やす。

 冷却水をつくり出す病院用の冷却装置は重さが50キロ超、高さ約1メートルと救急車への搭載には適していない。このため、大阪の医療機器メーカーと共同で携帯用の装置を開発。氷で冷却水をつくる仕組みで幅35センチ、高さ30センチ、奥行き15センチ、重さ10キロまで小型化した。医師が車内で操作し、搬送時に10~20分、5度の水で咽頭を冷やす。病院に到着後、専用マットなどによる全身冷却に切り替える。

 医師が救急車に乗り込むドクターカーが普及する大阪などでの実施を計画。不整脈や窒息などで、心肺停止状態に陥った患者10人の搬送時に実施する。

 2009年から武田講師らが津山中央病院など全国13病院で行ってきた施設内での咽頭冷却の臨床研究結果と比較。救急現場での実効可能性や治療効果などを検証する。

 今回の研究は岡山大倫理委員会が既に認めており、研究に協力する病院の倫理委員会承認を経て、11年3月末までに始める。

 武田講師は「治療が早ければ早いほど効果は高くなるだろう。救急車の中だけでなく、倒れた直後の心肺蘇生時から実施することも検討したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年01月04日 更新)

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