文字 

岩盤浴 2型糖尿病に効果

上者教授。研究室には岩盤浴用ベッドが備えられている

上者教授が共同研究をしている民間施設(倉敷市吉岡)での岩盤浴風景

 岩盤浴と言えば玉川温泉(秋田県)が有名だが、岡山県内でも民間の温浴施設やデイケア施設で入浴できる。その健康効果を岡山大大学院保健学研究科、上者(じょうじゃ)郁夫教授(放射線技術科学分野)=日本医学放射線学会専門医=らのグループが2007年から研究中。これまでに2型糖尿病の改善効果を確認し日本補完代替医療学会などで発表した。

 岩盤浴は湯水を使わず、熱を加えた鉱石や岩盤の上に横になり、体を温める。鉱石などから放射される遠赤外線のうち「育成光線」と呼ばれる光線(波長4~14マイクロメートル)は特に人体に吸収されやすいという。岩盤浴には新陳代謝改善、体温上昇による血行促進などの効果があるといわれる。

 上者教授らは、被験者となることに同意した50歳代の2型糖尿病患者7人(男性5人、女性2人、うち境界型2人)を対象に07年4月から研究を始めた。2型糖尿病は、インスリンを分泌する細胞が死滅する1型糖尿病とは違い、生活習慣が深く関わっている。

 7人は岡山大の共同研究先となった民間の温浴施設(倉敷市吉岡)に08年4月までの1年間、週2回の割合で通い、定期的に血液検査などを受けた。施設の岩盤は約50度、浴室の室温42~44度、湿度約65~70%に設定。毎回、岩盤の上にバスタオルを敷き、作務衣(さむえ)を着て15分の入浴を3回繰り返し、合間に5~10分の休憩と水分補給をした。

 1年間の岩盤浴の結果、効果は出た。空腹時血糖値(単位ミリグラム/デシリットル、正常値110以下)は開始前の平均157・6が129・0となり全員が低下、3人は正常値まで改善された。Hb(ヘモグロビン)A1c(正常値4・3~5・8%)は開始前の平均7・3%が6・6%に下がった。「合併症の飛蚊(ひぶん)症や末梢(まっしょう)神経の違和感が解消したり、尿糖が出なくなった人もおり、症状改善も見られた」と上者教授。開始前に平均35・8度だった平熱(舌下温)は37・1度まで上がった。

 その後は被験者6人に岩盤浴の利用は自由にしてもらい(実際は月に0~3回の利用だった)、1年後に再び同じ検査をしたところ、数値は岩盤浴開始前の水準に戻るか、悪化していた。

 上者教授は「週2回(1回45分)の岩盤浴を半年以上続けることは2型糖尿病改善に有効と考えられる。しかしそれだけでは限界があり、やはり生活習慣改善が大切」と話す。心疾患のある人や、低血糖になる恐れのある1型糖尿病患者は入浴に注意が必要という。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年01月17日 更新)

タグ: 健康糖尿病

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ