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公立校教師の精神性疾患休職 10年前比3倍  04年度岡山県内 目立つ30代後半から50代

精神性疾患による休職者の出現率

藤原忠雄さん

 ストレスが原因で起こるうつ病などで休職する教師が増えている。岡山県内で二〇〇四年度、精神性疾患で休職した公立小中高などの教職員は七十二人。教職員全体に占める割合(出現率)は0・47%(全国平均0・39%)で、数、出現率とも十年前の三倍に上っている=グラフ参照

 集計中の〇五年度の休職者数も、前年度を上回り、過去最多となる見通し。

 岡山県教委福利課によると、〇四年度、県内の休職者は百三十二人。このうち54・5%の七十二人が精神性疾患だった。精神性疾患の校種別出現率をみると中学校が0・6%と最も高く、次いで小学校0・52%、養護学校など特殊学校0・44%、高校0・21%。年代別でみると、三十代後半から五十代にかけてが目立つ。

 「三十代後半から目立つのは、学校での責任も重くなり、それまで懸命に走り続けてきた疲れが、体力・精神力の衰えとともに出るようだ。学校に対する保護者の目も厳しくなっており、保護者のクレームがきっかけだったケースもある」と同課。

 岡山県教委は二〇〇一年度からメンタルヘルス対策に乗り出し、専門家による相談窓口の設置や、復職時に「慣らし勤務」のできる支援プログラムも作成したが、歯止めはかかっていない。

 予防策が不可欠として、同県教委は〇六年度から、職場でのピアサポート(仲間同士の支え合い)を高めるため、同僚の悩みを聞いたり、グループで話し合う技法などを学ぶ教員研修を始める。「学校週五日制で平日が多忙化し、教師同士が雑談する余裕がなくなった」など現場の声や、休職者の主治医から「他の職種に比べ、教員は職場での相互援助が乏しいようだ」との指摘を受けての試みだ。

 しかしその一方で、同県内では○六年度、企業が取り入れている自己申告による目標管理制度がすべての公立校で導入される。現場の教師からは「上司は評価する側となり、ますます弱音が吐けなくなる」など、ストレスの増加を懸念する声もある。


ストレスの実態調査 40代に疲労感 少ない同僚のサポート

 WHO(世界保健機関)は、ストレスへの対処方法を学校で子どもたちに教える「ストレスマネジメント教育」を提唱しているが、その担い手となる教師がストレスにむしばまれているのが現状だ。日本ストレスマネジメント学会理事の藤原忠雄さん(47)=岡山県立早島養護学校教諭、写真=は、県内教師のストレスの実態を知ろうと約千人を調査、年代や校種による違いを分析した。

 調査は岡山大の松岡洋一教授の指導を受け、昨年六~七月、県内の幼・小・中・高、特殊学校の教師千六人にアンケート。職場の雰囲気や心身の状態などを聞いた。

 心身の状態について、年代別で特徴的だったのは四十代。二十、三十、五十代と比べ、四十代は疲労感や身体愁訴などを強く感じていた。

 仕事の感じ方については年代別に違いが見られ、二十代は身体的な負担感が強いが、三十代、四十代になると「勤務時間内に仕事が処理しきれない」などの量的負担感や、「いつも仕事のことを考えていなければならない」などの質的な負担感が強い。四十代では「自分のペースで仕事ができない」など、思い通りにいかないことへの負担感が強かった。

 また「気軽に話ができるか」「頼りになるか」など上司や同僚、家族・友人との関係については、二十、三十代に比べ、四十代、五十代は同僚や家族・友人の支援が少ない。男女別では、女性より男性の方が家族・友人の支援が少なかった。校種ごとにみると、特に高校で、上司、同僚、家族・友人ともに支援が少ないことが目立った。

 「ストレスの状況は性別、年代、校種により差があることが確認できた。さらに詳細な検討が必要だが、それぞれの対象によって、対策も変える必要がある」と藤原さん。社会的な支援とともに、急がれるのが教師自身のストレスマネジメント能力を高めることだという。

 ストレスマネジメントの柱といわれるのは次の四つ。①ストレスの仕組みを正しく理解する②自分の場合は体調にどんな変化が出るのかなど、自分のストレスに気づく③リラクセーションなど対処方法を習得する④日常生活で活用できるようになる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年02月06日 更新)

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