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お薬手帳の活用呼び掛け 県薬剤師会 「災害時の命綱に」

県薬剤師会が利用を呼び掛けるお薬手帳

 服用した薬の種類や量を記載する「お薬手帳」が、東日本大震災を機に注目されている。被災地の救護所で、手帳の情報から代替薬を特定できたり、かかりつけ医以外の診断がスムーズに運ぶ場合が多くあったという。平常時でも、飲み合わせによる副作用などを防ぐことができるなどのメリットがあり、県薬剤師会(岡山市北区表町)は積極的な利用を呼び掛ける。

 同会などによると、震災発生から約1週間が過ぎ、外傷治療が落ち着いた後の被災地の救護所では、処方薬がなくなった糖尿病や高血圧など慢性疾患の患者らへの対応が課題となった。カルテも散逸した状況で、被災者が自宅から持ち出したりしたお薬手帳が、処方や診断に役立ったという。

 災害医療チーム・JMATおかやまなどで5、6月に計4回、宮城県石巻市で活動した同会所属の薬剤師小笠原加代さん(51)は「必要な薬が不足する場合でも手帳の履歴から、代替品をすぐに見つけることができた」と振り返る。

 医療関係者が手帳の発行や記載を徹底したため、避難所を渡り歩く被災者が的確な診断を受けられたという。一方、手帳がないケースでは、患者に聞き取りを試みるものの、服用していた数種類の薬の名前を正確に思い出すことが難しく、薬の特定に時間がかかったり、専門外の医師が処方に苦労することもあったという。

 「被災地での事例は、岡山県内の医療関係者が手帳に注目する契機になった」と同会。本人と医療従事者が情報共有することで複数医療機関での重複投与を防ぐなど、本来さまざまな利点があるが、手帳の普及率は高いとはいえない。

 厚労省の全国調査(2010年)では、通院機会が多い75歳以上と乳幼児は7、8割。しかし10代後半から50代後半までの世代では、ほぼ4割以下となっている。

 県内の調剤薬局などは処方せんの受け付け時に利用を呼び掛けるが、「服用機会が少ない人は薬に対する意識が低く、なかなか利用に至らない」と同会はみる。

 赤沢昌樹副会長は「手帳は災害時は“命綱”に、平常時には薬や医療に対し、理解を深めるための参考にもなる」と訴えている。

 お薬手帳 調剤薬局や病院などの医療機関が無料で発行する。かかりつけ薬局以外でも、薬が処方される際に提出すれば、名称や服用量、副作用などを技術料として自己負担50円(医療保険3割負担の人の場合)で記録。個人が服用した薬の履歴が一目で分かる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2011年12月05日 更新)

タグ: 糖尿病

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