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金属だけの人工股関節研究 岡山理科大、ナカシマメディカル

試作中のリングばね(下)、骨頭側の半球(中)、外側の半球。溝にばねをはめて使用する

金枝敏明教授

 岡山理科大工学部の金枝敏明教授(超精密加工)らのグループが、ばねの弾性を利用して衝撃を吸収する人工股関節を研究している。主流の金属と樹脂の組み合わせでなく、全体に金属を採用した。摩耗に強い金属の特性と、土台となる骨への負担を減らす緩衝効果を併せ持つ新たな製品として、実用化が期待されている。

 人工股関節は、変形性股関節症や関節リウマチ患者らの関節置き換え手術で使用。樹脂と金属の組み合わせでは、緩衝材となる樹脂の摩耗粉が異物と認識されて免疫機構が働き、周りの骨が浸食されるなど、10年ほどで再手術が必要になるケースも多いという。一方、金属だけだと衝撃が十分に吸収できず、人工股関節や骨が損傷しやすいとされていた。

 金枝教授らはこれらの欠点を解消しようと、2010年から医療機器メーカー・ナカシマメディカル(岡山市東区)と共同研究。体組織との親和性が高いチタン合金の針金(太さ0・4〜0・8ミリ)をコイル状に巻いて細長いストロー状のばね(直径5ミリ、長さ約16センチ)を作り、直径5センチのリングに加工して緩衝材とすることを考案した。

 研究では、大腿骨に埋め込む金属の先端(骨頭)に半球を被せ、同心円状に溝を切ってリングばね数本を装着。その上に一回り大きな半球を取り付ける。半球同士の間に、ばねの厚みの分だけ隙間が空き、衝撃を緩和する仕組み。昨年7月、特許出願した。

 金枝教授は「今後、ばねの形状や大きさなどを変えながら耐久性や耐荷重、緩衝能力を精査。最適な構造を模索し、実用化にこぎ着けたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年05月25日 更新)

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