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小児がん「神経芽腫」 簡単診断キット開発 岡山理科大の三井准教授ら

新しい神経芽腫の検査キット。尿を付けたろ紙(手前右)をパンチでくり抜き、紙片と試薬を黒い反応プレートに入れて検出機で調べる

三井亮司准教授

 岡山理科大理学部の三井亮司准教授(応用微生物学)らのグループは、小児がんのうち白血病に次いで多いとされる「神経芽腫」を簡単に診断できる検査キットを開発した。特殊な試薬を患者の尿に混ぜて発色させ、明るさから判別する方法で、検査時間の大幅な短縮も可能。将来の実用化を目指している。 

 既存の検査は、尿に多く分泌される特定の有機化合物の量を調べる。三井准教授らはこの化合物に反応する酵素を微生物から抽出。酵素を使った試薬に患者の尿を混ぜると蛍光色のピンクに光り、その度合いを検出機で診断する方法を考案した。

 キットは96人分をわずか5分程度で調べることができ、1人約30分かかる従来法よりも格段に迅速な検査が可能。検出機も安価で小規模な検査機関でも取り組みやすいという。

 三井准教授らは共同研究先で、診断薬の研究開発を手掛ける「札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー」(札幌市)を通じて乳幼児300人の尿を開発したキットで検査したところ、これまでの方法とほぼ同じ結果が得られ、精度の点から遜色がないことを確認した。

 さらに、この酵素は神経芽腫に由来する別の有機化合物にも反応。従来法で正常値だった一部の検体で陽性に近い値が出た。同社の福士勝所長(医学博士)は「より診断の精度を高められる可能性がある」としている。

 三井准教授は「このキットでコストが下がれば検査を受けやすくなり、早期発見にも役立つ。実用化にはまだまだ調査が必要だが、協力してくれる自治体や医療機関を探したい」としている。

ズーム

 神経芽腫 副腎などにできる腫瘍(しゅよう)。国は2004年まで6カ月児の検診で調べていたが、自然に治る例があることなどから現在は中止になった。ただ、悪性化して死亡する例もあり、札幌市など独自に費用を補助して検査している自治体もある。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2012年07月30日 更新)

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