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医師も在宅医療に不安や負担感 岡山市調査、希望市民は3割

 在宅医療の普及を目指す岡山市は、市民や医療・介護の専門職を対象に初めて行った意識調査の結果をまとめた。在宅医療を望む市民は3割にとどまり、自宅の環境整備などを課題に挙げた。不安や負担感は市民だけでなく、医師も抱いている実態が浮かび上がった。調査は昨年11、12月に実施。市は結果を踏まえ、今秋をめどに在宅医療推進方針を策定する。

■市民

 20〜89歳で無作為抽出した2980人のうち、1329人が回答した。回収率44・6%。

 医療や介護が必要になったとき、どこで過ごしたいかを尋ねたところ、トップは自宅で33・2%。次いで病院(25・9%)、介護施設(19・4%)、有料老人ホームなど(13・0%)。医療・福祉施設を合わせると、自宅よりも多かった。

 在宅医療や介護へのイメージでは、「療養できる部屋や風呂、トイレなど住環境を整える必要がある」「家族に負担が掛かる」の項目で、「とてもそう思う」と答えた割合が70%台に上った。「満足できる最期を迎えられる」は23・0%にとどまった。

 市新病院・保健福祉政策推進課は「在宅療養への不安感に加え、市内は病院や介護施設がある程度充実していることが、自宅で過ごしたい人の割合を下げているのでは」とみている。

■診療所医師

 566診療所の医師に聞いた。回答者のうち、在宅医療に関係する診療科を持つ診療所の224人が抱く在宅医療イメージは、「家族の介護負担が大きい」の項目について「そう思う」「少し思う」の回答を合わせると91・5%。「医師の時間拘束で負担が大きい」は88・8%、「十分な医療が提供できない」は63・8%だった。

 一方で、「今後推進すべき」「関心がある」「患者の満足度は高い」の項目も80・4〜68・3%に上っており、在宅医療の必要性は感じつつも二の足を踏んでいる様子がうかがえた。

 訪問診療での負担軽減に有効と考える取り組みは、「総合病院から代行の医師を派遣してもらえる制度」「救急搬送など急変時の対応を(本人や家族と)事前に確認しておく」などのニーズが高かった。

■ケアマネジャーら

 患者の退院先の調整役となる病院の「地域連携室スタッフ」(回答33人)、ケアプラン作成に当たる居宅介護支援事業所の管理者・ケアマネジャー(同192人)、訪問看護ステーションの管理者(同36人)にも調査。

 地域連携室のスタッフは、患者の退院先調整が抜け落ちているケースがあるとの回答が72・7%もあった。患者の在宅生活への円滑な移行のため、かかりつけ医やケアマネジャーがいない場合の調整機関が必要との回答は75・8%だった。

 居宅介護支援事業所の関係者では、「医療知識の不足が業務に支障を来している」の項目に対し、「そう思う(少し思うを含む)」が74・0%、「医療の必要度が高い患者に苦手意識がある」は63・6%。在宅医療に関する研修の充実が課題となっている実情がうかがえた。

 人手不足が指摘される訪問看護ステーションでは、増員対策として、病院並みの給与・福利厚生、保育所の確保、訪問看護の体験機会を増やす―などの順で有効と考える割合が高かった。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年05月21日 更新)

タグ: 介護福祉医療・話題

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