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ドッグセラピー、認知症に効果 岡山の社会福祉法人研究

ドッグセラピーを受けながらリハビリを行う患者(右)

 重度の認知症患者のケアに犬を役立てる「ドッグセラピー」に約11年間取り組んでいる社会福祉法人・義風会(岡山市北区下足守)は、犬との触れ合いが患者のリハビリ意欲を向上させ、身体機能の回復にもつながっているとする研究成果をまとめた。9月に鳥取県で開かれる理学療法士学会で発表するなど効果の高さをアピールし、セラピーの介護保険適用を目指す。

 義風会は岡山県内で老人保健施設や特別養護老人ホームなど11施設を運営。2002年から全国に先駆けてドッグセラピーに取り組んでいる。今回は、老健施設・高松アクティブホーム(同立田)で飼う7匹で6施設の患者にセラピーを行い、医師の生長豊健理事長ら9人が効果をまとめた。

 研究は、介助がなければ歩行や食事ができず、言葉も発しない重度の認知症患者20人(平均年齢87歳)を犬に関心を持つ人と、持たない人各10人に分けて実施。両グループとも「車いすからベッドへの移動」と「歩行」のリハビリを行い、関心を持つグループには犬を付き添わせるドッグセラピーも並行し16週間(週3日、各40分)の変化を調べた。

 その結果、関心を持つグループは自力で立ち上がり、犬と散歩へ出掛けるようになったり、自発的に言葉を発するようになる患者もいるなど大きな変化がみられた。行動意欲や身体機能の改善度を得点化すると、平均点は関心のないグループの4倍以上だったという。

 携わった医師らは、患者に「かわいがりたい」「犬のために何かしたい」との願望が湧き、生活への意欲が向上していると分析している。

 ドッグセラピーは“癒やし”効果に注目が集まるが、犬の飼育に一定のコストが掛かるため、国内でも導入する施設は少ないという。研究に加わった塩見和昭・義風会本部部長(45)は「効果を初めてデータで実証できた。セラピーを広く普及させるため、今後も症例数を増やして症状が大幅に改善されることを証明したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年06月16日 更新)

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