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骨矯正手術ガイド器具開発 岡山の医療機器メーカー

ナカシマメディカルが開発したガイド器具(右)。スリットに医療用のこぎりを差し込んで使用する

 医療機器メーカーのナカシマメディカル(岡山市東区上道北方)は、骨折で変形した腕の骨の矯正手術に用いる「ガイド器具」を開発した。患者一人一人の骨の形状に合わせることができ、手術の精度向上と時間短縮につながる。医療用具として厚生労働省の認可を得ており、2014年1月から国内の医療機関向けに販売を始める。

 矯正手術は骨折後にゆがんで接合した骨を元通りの形状に直す治療で、骨の一部を切断してつなぎ直す。ガイド器具はナイロン樹脂製で、切断する骨の周囲に固定して使用。器具には幅数ミリのスリット(穴)があり、医療用のこぎりを差し込み、スリットに沿って骨を切る。切断後にガイド器具を取り外し、骨はプレートなどで留める。

 手術前にコンピューター断層撮影(CT)の画像から患者の骨の立体モデルを作成。これを基に、骨の表面形状にぴったりと合うガイド器具を積層造形装置(3Dプリンター)で成形する。これまでの手術では、骨の切断部位は医師の経験に頼る面が大きかったが、同社のガイド器具を使えば切断部位が明確になり、通常2時間以上掛かる手術が40分程度で済むという。

 大阪大との共同研究で、今夏に厚労省の認可を取得した。ガイド器具の従来品は汎用(はんよう)性が高い半面、患者個々の骨の形状に合っていなかった。

 同社は3Dプリンターを人工関節の開発にも活用しているが、同装置でつくる製品を実用化するのは初めて。技術を応用し、人工膝関節と人工股関節の取り付け手術用のガイド器具も研究しており、来春から順次、市場投入する方針。

 同社によると、国内では腕の骨の矯正手術件数は年間数百件程度。一方、人工関節の手術は膝と股関節で計15万件以上行われている。同社は「3Dプリンターを活用することで、個々の患者に合わせたオーダーメードの医療用具が提供できる。ガイド器具と併せて人工関節本体も売り込みたい」としている。

 同社は船舶用プロペラメーカーのナカシマプロペラ(岡山市)の事業部門から2008年に独立。資本金1億円。売上高25億6千万円(12年11月期)。従業員約170人。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2013年11月16日 更新)

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