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がん電話相談室おかやま10周年 永瀬室長に聞く 終末医療に関心を、残された時間有意義に

永瀬正己さん

電話相談に応じる「がんの悩み電話相談室おかやま」のメンバー

ホスピスボランティア講座おかやま基礎講座で講師の話に聞き入る市民=20日、岡山大医学部

 がん治療をめぐる患者や家族の疑問、不安に電話で答えるボランティア団体「がんの悩み電話相談室おかやま」(事務局・岡山市並木町)が開設十周年を迎えた。週一回の実施で、これまでに応じた相談は八百五十一件(三月末現在)。開設当初から室長を務めている元岡山県医師会長の永瀬正己さん(91)=同市中山下=に相談室の活動や、がん治療の現状について聞いた。

 電話相談は一九九六年九月、終末医療の研究会に参加していた医師、保健師、看護師らが始めた。これまでの相談内容の内訳は、手術、抗がん剤など治療21・4%▽胃がん、大腸がんなど疾患13・4%▽再発・悪化12・4%▽医師との関係10・5%―など。

 相談は一回平均二件前後。ただ、二〇〇三年度百四十件、〇四年度九十九件、〇五年度六十九件と近年は減少傾向にある。「相談者は医師に聞きそびれたり、聞きにくいことを電話で尋ねる。相談が減ったのは医師のインフォームドコンセント(十分な説明と同意)が次第に行き届いたためとみられ結構なこと」。永瀬さんは逆に歓迎する。「ただ、まだ十分とは言えない。電話相談の必要がなくなる日が早く来てほしい」と願う。

 相談に応じるのは、所定の研修や審査をへて承認されたボランティア。現在は約四十人おり、二、三人ずつ交代で務める。「ほとんどが医師でないため専門的な対応は難しいが、相談者と同じ目線でアドバイスできる」。永瀬さんは相談員に対し、相談者に寄り添ってじっくり話を聞く大切さを説いている。

 また、相談員養成の“入門”として毎年一~六月に六回開く「ホスピスボランティア講座おかやま基礎講座」は、第一線の医師らから正しい知識を得られる貴重な場として関心を集め、毎回百人前後の市民が受講。電話相談と並ぶ同相談室の活動の柱となった。

 「私はがんで死にたい」―。例年、同講座で終末医療について講義する永瀬さんは、こう語り受講者を驚かせる。心筋梗塞(こうそく)や脳出血などで急死する「ピンピン・コロリ」に比べ「がんは死期がある程度予測でき、身辺整理の時間が持てる。末期の痛みも、ほとんど緩和できる医療が可能になった」のがその理由だ。

 一方で、手術や抗がん剤などの治療に比べ、終末医療に対する医師の関心は低いと言い、「痛みに苦しみながら亡くなる患者がいまだにいる」と指摘。「医師がもっと終末医療に関心を持ち、患者の苦痛をやわらげ、残された時間を有意義に過ごせるよう配慮してほしい」と注文している。

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 電話相談は毎週土曜日午後二時~五時、086―264―7033。


 ながせ・まさき 1939年、岡山医大(現・岡山大医学部)卒。海軍軍医をへて、終戦後は岡山市内で内科医院を開業。82年から6年間、岡山県医師会長を務め、日本医師会理事なども歴任。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年05月23日 更新)

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