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(6)岡山西大寺病院 断らない救急 リハビリ機能を強化

岡山西大寺病院専用の救急車。東日本大震災が発生した年に導入した

リハビリテーション科。43人の職員がいる

(上段左から)小林直哉理事長、花川志郎院長、近藤末美看護部長(下段左)弓掛秀樹科長

 車体側面に太く書いた「岡山西大寺病院」の文字が目立つ。東日本大震災が起きた2011年に1台導入した同病院専用の救急車。専門高度な医療を担う岡山中心市街地の病院へ患者を送り、また急性期治療を終えた患者を再び受け入れるために走る。

 「自分たちの立ち位置をはっきりさせ、真に機能する地域連携病院を目指す」と、同病院を運営する社会医療法人盛全会の小林直哉理事長は述べる。小林氏は元岡山大学病院講師で、消化器がんの手術に腕を振るった。岡山大では12年間、ヒト肝細胞を使ったバイオ人工肝臓の研究開発などに携わった。10年2月、院長として着任し病院を大きく変えてきた。

 岡山大学病院救急科の協力を得、西大寺地域を中心に岡山市東区と瀬戸内市を医療圏として始めた「断らない救急」は今や病院の看板となった。09年215件だった救急患者受け入れ件数は10年510件に増え、13年は1048件を数えた。2次救急を担い、診断治療が可能な患者はそのまま受け入れる。

 近藤末美看護部長は小林理事長に請われ、11年4月就任した。それまで岡山大学病院消化管外科の看護師長を務めていた。「断らない救急」が軌道に乗りつつあった時期で、就任3カ月目には全病床119床(一般74床、療養45床)が満床となった。「以後、病床稼働率が90%を切ったことはない」と近藤部長は話す。看護師70人。人工呼吸器を付けた患者、食道がん手術後の患者も看護している。

 岡山労災病院副院長だった花川志郎氏(整形外科)が昨年4月、岡山西大寺病院長の任に就いた。大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折や橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折など高齢者の骨折について、花川院長は「西大寺地域で治療を完結させたい」と語る。そうした狙いもあり、リハビリテーション機能を強化している。

 4年前まで8人体制だったリハビリテーション科職員は現在43人(理学療法士35人、作業療法士6人、言語聴覚士2人)。リハビリ実施件数(入院・外来計)は10年2万319件、11年5万4838件、12年6万7579件と増加。治療対象は運動器や脳血管障害が主だが「今後はがん患者のリハビリも行っていきたい」と弓掛秀樹科長は抱負を示す。同科職員が働きやすい環境づくりにも力点を置く。11年4月に開設した透析室(=血液浄化センター、13床)では現在、夜間透析も行っている。

 負債を抱え経営難に陥った岡山西大寺病院だが、12年から企業再生支援機構(当時)の支援を受け、経営立て直しを図ってきた。昨年12月、岡山市東区で初の社会医療法人となった。病院職員は従前の2倍の約320人に増え、平均年齢は30代前半、経営難の頃よりも10歳若返ったという。16年5月、近隣地に新病院(鉄筋7階延べ約9200平方メートル)を開設する。

◇岡山西大寺病院(電話086―943―2211)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年02月03日 更新)

タグ: 医療・話題

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