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診療報酬不適切請求、後絶たず 岡山県内、12年度6.2億円

 岡山県内の保険医療機関・保険薬局で治療や投薬に対する診療報酬の不適切な請求が後を絶たない。中国四国厚生局岡山事務所(岡山市北区下石井)が2012年度、請求を不当として返還を求めた診療報酬は約6億2200万円。高齢化が進み、医療費抑制が大きな課題となる中、専門家は「医療費の無駄遣いだ」と指摘する。

 同事務所が医科、歯科、薬局に返還を求めた診療報酬は、記録が残る08年度からの5年間で計約7億9780万円。このうち12年度は8割近くを占め、08年度(約620万円)の約100倍に上った。

 5年間の返還額の大半は、医師がカルテに診療内容を正確に記載していないため、健康保険法上、請求が認められなかったり、請求の算定を誤ったケース。12年度が跳ね上がったのは、実際よりも高い入院料を請求していた事例があったためという。

 岡山事務所は、保険者からの情報提供などから個別指導を実施。カルテとレセプト(診療報酬明細書)を照合し、請求が適正かを確認する。不正が疑われる場合、同法に基づき強制力のある監査に移行。不正と断定すれば、5年間の保険医療機関や保険医の取り消しといった処分を行う。

 同事務所によると、12年度までの5年間の県内の個別指導は118件(医科49、歯科24、薬局45)。監査に至ったのは12件(医科10、歯科2)あり、12年に岡山市の皮膚科医院、13年に倉敷市の精神科病院、今年1月には岡山市の眼科医院に対し、実際には行っていない診療報酬を請求したなどとして、保険医療機関の指定取り消しなどの処分を下した。

 「人員不足もあり、調査が百パーセントできているとはいえない」と同事務所。一方で現場サイドには戸惑いも広がる。全国的には保険医の取り消しが不当として訴訟に発展することもある。

 岡山県保険医協会によると、指導・監査をめぐっては担当者により対応が異なる場面があるといい、高久隆範理事は「当惑する医師、歯科医も多い。どういうケースが不適切な請求に当たるのか、国には明確な基準を公表してほしい」と訴える。

 わが国の医療費総額(11年度)は38兆5850億円と過去最高を更新。増大する高齢者医療に対する負担などを背景に保険財政が悪化する中、診療報酬の返還総額は12年度、全国で約130億4千万円に上った。

 医療経済に詳しい川崎医療福祉大の大田晋特任教授(社会保障)は「診療報酬の主たる財源は国民や企業が負担する保険料や税金。悪意の有無に関係なく、不適切な請求があってはならない」とした上で「領収書と医療費通知を照らし合わせたり、過剰な検査や投薬を受けていないか、患者も普段からチェックを心掛けてほしい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年05月18日 更新)

タグ: 医療・話題

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