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女性医支援や勤務医対策を 笠井日医常務理事に聞く

笠井英夫(かさい・ひでお) 岡山市生まれ。岩手医科大卒。岡山大耳鼻咽喉科助手、川崎医大耳鼻咽喉科講師などを経て開業。岡山市医師会理事、県医師会専務理事も務め、今年6月から現職。

 日本医師会(日医)の常任理事に岡山県内から初めて選出された笠井英夫氏(70)=岡山市北区。16万人を超える会員を束ねる執行部の一員として、女性医師のサポート、勤務医対策などを受け持つ。担当職務の取り組みや課題について聞いた。

 ―岡山市と県の医師会に長年携わった後、日医の常任理事に就任した。

 重職であることを日々実感している。日医の会員は、病院勤務医と開業医がほぼ半々。市と県の医師会での経験を基に、異なる立場を理解し、発言の重さを自戒しながら、国民が笑顔になる医療を目指している。

 ―多様な日医の役割の中で、男女共同参画、女性医師が働きやすい環境づくりを担っている。

 大学医学部の3割は女性。せっかく医師になっても、環境が整っていないために職を離れるのであれば医療にとって大きな損失だ。(2007年から運営している)女性医師バンクに、ベテラン女性医師をコーディネーターとして配置している。育児などによって遅れたキャリアを取り戻す方法をアドバイスしたり、比較的負担の軽い職場を探したりする体制を整えている。

 ―もう一つの担当である勤務医対策はどういった点に主眼を置いているのか。

 医療・介護一体改革法(地域医療・介護総合確保推進法)が来年度スタートするのに伴い、高度医療から病気全般の診療まで、勤務医と開業医の連携が一層重要となる。患者が病院を選択しやすいよう、開業医も交えて日医の勤務医部会で協議したい。医療事故の対応も厳格になるが、医師が萎縮しないよう、現場の声を国に届ける。

 女性医師支援にしろ勤務医対策にしろ、必要なのは組織力の強化。会員に若い世代が少ない。悩みを抱える医師の相談窓口があるのに、情報が届いていない。学生、臨床研修医らも加わりやすいシステムをつくろうと、プロジェクト委員会を立ち上げている。フェイスブックなどSNS(会員制交流サイト)も少しずつ手掛けている。

 ―政府は規制緩和で保険診療と保険外の自由診療を併用する混合診療の拡大を図っている。

 保険診療の前提は安全性。自由診療の中でも、安全性の審査が追いついていないだけで将来保険適用される医療については、患者の申し出に基づき一定の医療機関での実施を認めようというのが日医のスタンス。患者の安心安全がある程度担保されない限り、混合診療が際限なく広がってもいいとは言えない。

 ―東京に拠点を置き、岡山との違いをどう感じるか。

 一つは発言が全国区に及ぶ責任の重さ。もう一つは情報量の差。常任理事として得た情報を、どう地方に伝えていくかを常々考えている。岡山や中国地方の医療サービス向上につながるよう、職務を果たしていきたい。

 ◇
 
 日本医師会 医師の3分の2ほどに当たる約16万6000人が加入する公益社団法人。執行部は会長を筆頭に副会長(3人)、理事(15人)、常任理事(10人)で構成されている。任期はそれぞれ約2年。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2014年11月25日 更新)

タグ: 医療・話題

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