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追跡 骨髄移植5年 主婦坂本さん(真庭) 家族がいるから白血病と闘える 「生存率40%」乗り越え

骨髄移植から5年。尚代さん、保男さん夫婦のきずなは強まった

 家族と一緒だから生きられる―。骨髄移植で白血病から社会復帰した真庭市宮地の主婦坂本尚代(ひさよ)さん(40)が、ドナー(提供者)から“新たな命”を授かって、今夏で丸五年が経過した。「移植後五年間の生存率40%」という一つの節目を乗り越えた尚代さんは「夫や子どもたちに生きる力を与えられた」と振り返る。

 「移植を受けても受けなくても、あと三年」。夫の保男さんは昨夏、胸の内にとどめていた医師の言葉を尚代さんに初めて明かした。生きる自信をなくさないように「大丈夫」と励まし続けてはいたが、不安に揺れた日々。「長いようで短い五年間でした」。


■子どもの笑顔

 尚代さんが血液病の一つ骨髄異形成症候群と診断されたのは二〇〇〇年夏。二人の子どもは小学一年と保育園児だった。やがて慢性骨髄単球性白血病へと移行したが、幸いドナーが見つかり、〇一年七月、松山市の病院で移植手術を受けた。

 半年間の入院中、保男さんは毎週、子どもを連れて車で片道三、四時間かけて見舞った。病床の母のありのままを見て、つらさを分かってほしかったからだ。

 無菌室での治療が始まると、テレビ電話を設置した。子どもたちは学校の出来事を笑顔で語りかけてきた。「一人じゃない」。尚代さんは元気と勇気をもらったという。


■ドナー不足

 骨髄移植を待つ登録患者は、国内に千四百九十三人(六月末現在)。これに対して骨髄移植のドナー登録者は、全国二十五万三千七百七十九人、岡山県では五千二百七十四人(七月末現在)。サッカー元日本代表主将・井原正巳さんのCM起用や、登録要件の拡大(十八~五十四歳)で年々増えてきた。

 それでも、ドナーが足りないのは、白血球の型(HLA)が一致する確率がきょうだい間で四分の一、非血縁者間で数百~数万分の一でしかないからだ。

 骨髄移植への理解が足りないこともある。骨髄液でなく骨の移植だと勘違いして二の足を踏む人もいる。「だからこそ、私たち移植体験者が積極的に発言していかないと」と尚代さんは言う。


■大切な目標

 この五年間、感染症を避けるため子どもの授業参観もままならなかったが、白血球や血小板は正常な範囲で増えてきた。

 夫婦には今、ささやかだが大切な目標があるという。いつの日か、孫の顔を見ることだ。「家族も本人と一緒になって病気と闘っている。そして、これからも闘う」と、保男さんは言った。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年08月09日 更新)

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