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(3)岡山県の現状 新見市国民健康保険湯川診療所・渡辺病院内科 藤井修一

岡山県地域医療支援センターHPより 2011年「医療機能情報」、12年「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」に基づく

藤井修一医師

 「医師不足」と報道されることが多いですね。岡山県ではどうなのでしょうか?

 グラフに示しているように、日本全体では人口10万人当たりの医療施設従事医師数は249・9人です。岡山県は301・1人と全国6番目に多く、医師の数には恵まれた県なのです。岡山県は医師不足ではないといいたいところですが、地域の偏よりという問題があります。

 都道府県が病床の整備を図るに当たって設定する地域的単位のことを医療圏といいます。特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏を2次医療圏といい、複数の市町村を一つの単位として医療計画は立てられています。

 岡山県では2次医療圏を、県南東部圏域、県南西部圏域、津山・英田圏域、真庭圏域、高梁・新見圏域の五つに設定しています。グラフでは、それぞれの圏域での人口10万人当たりの医師数も示しています。県南では医師数が多く、県北では少ない状況が示されています。県南でも岡山市、倉敷市を除いた市町では医師数が県北よりも少なくなっています。つまり、岡山県では岡山市と倉敷市の都市部以外の地域では医師が少ないという現状なのです。

 なぜ都市部に医師は集中するのでしょうか? それは、医師は自由に勤務する場所を決めることができることが影響しています。都市部にある大病院ほど専門とする疾患の患者さんが多く集まり、特殊な技術の習得や研究をやりやすい環境を得ることができます。また医師が多くいる環境の方が当直など負担のかかる業務を分担することができるため、さらに集まりやすい状況になります。

 以前は大学に所属する医師が大多数であり、大学で専門診療や研究をする一方、一定の期間は地域の医療機関へ派遣することが行われていました。しかし、最近では大学に所属する医師が以前に比べ少なくなってきたことや、大学にはより質の高い診療・教育・研究が求められていることもあり、派遣できる医師が少なくなっている状況があります。

 このような状況から、岡山県は2012年2月、「県地域医療支援センター」を開設し、医師の地域偏在の解消や、地域医療を担う医師の育成・キャリア形成の立案が行われています。岡山大学では「地域医療人材育成講座」を設けて学生に地域医療教育を行っています。岡山大医療教育統合開発センターGIMセンター部門は「地域を支え、地域を科学する総合診療医の育成」プロジェクトを立ち上げて、地域医療機関と協力して総合診療医育成に取り組んでいます。

 地域の場が働きやすく、医師として成長できる環境になれば、次第に地域へ医師は集まってくると思います。地域医療の現場は内科や外科等の領域に偏らないさまざまな健康問題や社会的な問題を抱えている患者さんが受診され、総合診療を実践・勉強するには絶好の場所です。地域の医療機関や行政は医師を派遣してもらうことだけではなく、自らの地域で、医師にどのような働き方や暮らし方を提供できるかを含めて検討していくことが今後求められています。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年02月02日 更新)

タグ: 医療・話題

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