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(4)自治医科大学と地域枠入学制度 新見市国民健康保険湯川診療所・渡辺病院内科 藤井修一

藤井修一医師

地域を指定した入学者選抜(地域枠)などの導入状況=文部科学省医学教育課 地域医療に関する調査2013年

 地域医療を担う医師を専門に養成する大学があることをご存じでしょうか?

 昭和40年代、都市部へ人口が流入すると同時に地方では過疎化が進み、医療者も不足する状況でした。そのため昭和47(1972)年、医療に恵まれないへき地等における医療の確保向上および地域住民の福祉の増進を図るため、自治医科大学は設立されました。

 卒業後は出身都道府県に戻り、初期研修を終えた後に地域医療に従事します。学生教育は地域医療についての講義が6年間を通じて行われており、実際に卒業生が働いている地域へ実習に行きます。私は自治医科大学の卒業生であり、学生時代に地域医療について多くの講義を受けました。

 自治医科大学には「医療の谷間に灯をともす」という合言葉を胸に地域医療に挺身(ていしん)するという理想像があります。同級生全員が地域医療に従事することから、6年生の卒業間近になると「これから地域で医師としてがんばっていこう」という一体感が生まれていたように思います。

 近年ではさらに地域で働く医師を確保するために、地域枠入学制度を導入する大学が増えています。これは、卒後働く地域を指定することを約束して入学する制度であり、自治医科大学に似た仕組みと言えます。岡山県では岡山大学と広島大学に地域枠入学制度を設け、卒後に岡山県が指定する病院で勤務することを義務づける制度となっています。

 で示している通り、地域枠の制度で入学する学生は全国で年々増加しており、2013年度では68大学1425人の募集人数となっており、医学部全入学者数の15%を占めています。

 自治医科大学も地域枠入学も、卒後おおよそ9年間自治体から指定される医療機関での勤務を義務づけられるため、その代わりに奨学金を貸与されます。

 すべての期間地域医療のみ行うわけではなく、岡山県では地域医療に勤務している時期も一定期間専門分野の勉強をすることができます。私は川崎医科大学脳卒中医学教室で勉強する機会を得て、脳卒中専門医の資格を取得することができました。地域の病院と大学病院のどちらも経験することで、医師としてより成長できたと思います。

 都市部で勤務する医師と比べて、へき地に勤務する医師は三つの特徴があると言われています。一つ目はへき地出身者であること、二つ目は主に総合診療を行う医師であること、三つ目にへき地医師養成プログラム出身者であることです。

 たまたまですが、私は全て合致しています。私はいわゆる田舎の出身で、周囲に医学部を目指す人がおらず、孤独な勉強を続けていました。おそらくいま田舎で医師を目指して勉強している人も同じ状況だと思います。

 医師になってみて、田舎で暮らしていたからこそ理解しやすいことが多くありました。祖父母からの教えや習慣、農業などの経験は地域で仕事をするうえで実感を伴いより患者さんの背景を理解することに役立っています。私と同じような環境の人もぜひがんばって医学部に挑戦してほしいと思います。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2015年02月16日 更新)

タグ: 医療・話題

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