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医療費補助縮小 見直して 特定疾患のパーキンソン病と潰瘍性大腸炎 岡山の患者団体 厚労省に嘆願

パーキンソン病治療で4種類の薬を服用する大道寺さん。患者は数種類の薬を併用することが多く、医療費もかさむことになる

 国の特定疾患(難病)に指定されているパーキンソン病と潰瘍(かいよう)性大腸炎の患者に、今後の医療費負担に対する不安が広がっている。厚生労働省の特定疾患対策懇談会が八月、これまでの補助の対象者を縮小する方針を示したためだ。「対象を外れると、患者の収入によっては必要な治療を受けられなくなる」―。患者団体・岡山県パーキンソン病友の会も九月、約八百人の署名を添えた嘆願書を同省に提出。見直しの中止を求めている。

 岡山市円山、大道寺一男さん(69)は一九九九年、右手の震えを感じ病院を受診。パーキンソン病と診断された。

 歩行がぎこちない、姿勢が前かがみになるなどの症状に悩んだが、今は薬でコントロール。「閉じこもっていても仕方ない」と、趣味のうたごえ喫茶などの活動に積極的に参加し、今夏からは岡山県パーキンソン病友の会事務局長も務める。

 発病して間もなく特定疾患の対象患者に認定され、月一回の外来での支払いは自己負担限度額の月千百二十円で済んでいる。しかし、対象を外れ三割の自己負担になると、九月の診察、投薬料の例で約一万八千円に跳ね上がる。

 「一気に十倍以上の負担増はきつい」。妻と年金生活を送る大道寺さんは顔を曇らせる。

相次ぐ反発

 医療費が補助される特定疾患は現在、四十五ある。医療費の患者負担のうち、所得に応じた限度額(最高で外来月額一万千五百五十円、入院二万三千百円、重症患者はゼロ)を超えた分を国と都道府県が公費で負担している。

 今回の見直しは、対象患者が潰瘍性大腸炎約八万人、パーキンソン病約七万三千人と、特定疾患の指定要件である五万人未満を上回ったためで、両疾患で四分の一を占める公費負担額の縮小が狙い。特定疾患対策懇談会は軽症患者を対象から外す方向で検討を進め、十月にも取りまとめの議論に入る。その結論を受け同省は来年度から実施の考えだ。

 これに対し、九月に行われた全国的な患者団体の意見聴取では「五万人に科学的根拠があるのか」「対象から外れた場合、軽症者でも受診抑制から体調を悪化させることが予想される」など反発が相次いだ。さらに患者団体は、他の病気の患者が特定疾患へ追加を要望しているのを受け、予算の増額も求めている。

判断基準に懸念

 岡山県内の特定疾患患者は昨年度末でパーキンソン病が千六百十九人、潰瘍性大腸炎が千四百七十四人。

 このうちパーキンソン病は既に、五段階の重症度分類で3度以上に特定疾患の対象患者が限定されており、「もし4度以上に引き上げられると、現在の対象患者の半数は外れるだろう」と岡山県パーキンソン病友の会会長の大本泉さん(76)=岡山市佐山。「その結果、月数万円も医療費負担が増え、高齢者が多い患者は生活が困難になる」と心配する。

 一方、二十代の発病が多い潰瘍性大腸炎とクローン病の患者団体・岡山えーでー会事務局の池田豊紀さん(50)=笠岡市神島=は「患者は若くても病気のため就職が難しい。高額の医療費負担はやはり厳しい」と現状を説明。潰瘍性大腸炎は症状の緩解と再燃を繰り返す疾患のため「薬で病状を抑えられているからといって、軽症扱いで対象患者から外されるのは困る」と、重症度の判断基準にも懸念を示している。

ズーム

 パーキンソン病 手の震えや動作緩慢、小刻み歩行が主な症状。脳の黒質の神経細胞が減るのが原因で、治療では不足した神経伝達物質を薬で補う。50代後半から60代の発病が多い。進行性の病気だが、天寿は全うできるとされる。ボクシング元世界王者のムハマド・アリ氏が闘病生活を送ることでも知られる。

 潰瘍性大腸炎 大腸の粘膜に潰瘍やびらんができ、下血や下痢、腹痛などの症状を起こす。発病のピークは20代。薬で炎症を抑えるのが治療の中心。重症の場合は大腸の全摘手術が必要となる。多くの患者は症状の再燃と緩解を繰り返す。発病から10年以上たつと大腸がんを合併する危険性が高くなるとされる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年10月03日 更新)

タグ: 医療・話題

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