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医療・福祉リーガルリスク予防研究センター 医師と患者の誤解解消へ 運営責任者・西田助教授(岡山大法科大学院)に聞く

西田助教授

 岡山大法科大学院に今秋、医療や福祉分野での紛争予防と解決支援に取り組む「医療・福祉リーガルリスク予防研究センター」が設置された。国内の大学機関では初の試みで、中立的立場により、医療機関、福祉事業者と患者、サービス利用者のトラブル解消に大きな期待が寄せられる。運営責任者の西田和弘同大学院助教授(39)=社会保障法=に設立目的や今後の展望などを聞いた。

 ―センターの業務内容は。

 リーガルリスク(法的トラブル)の予防に関する研究が一つ。次に患者、利用者だけでなく、医療機関や施設側からの相談を受け、解決に向けた方法をアドバイスすること。助言で解決しない場合、お互いの意見を調整し裁判外紛争解決を図る。調整が不調に終わった場合、専門の弁護士の紹介もする。

 ―設立の経緯は。

 日本では一九八〇年代から医療サービスを受ける患者の権利意識が芽生えた。福祉分野でも介護保険制度のスタートで、利用者に同様の意識が生まれた。従来は「これくらい我慢しよう」と思っていた患者の医療過誤訴訟などが増加した。しかし、コミュニケーションのギャップが紛争に発展しているケースが多く、両者の誤解を解く手助けをする機関が必要だと思った。

 ―どのような相談を対象にするのか。

 明らかに権利を侵害されたのであれば、弁護士に依頼すればよい。センターでは「医者の治療内容の説明に納得できない」「カルテ開示をどう請求すればいいのか」など、権利侵害につながりかねない不満、苦情を受ける。「なぜトラブルになったか分からないが、もめ始めた」といった病院、施設側の相談にも積極的に応じる。いずれも法的問題になりかねないものが対象だ。

 ―相談に当たるメンバーは。

 医師や弁護士、社会福祉士らで昨年十一月に設立した大学院の「専門家ネットワーク」のメンバー四十六人。医療、福祉サービスに関するトラブルでも、実際には消費者被害や扶養問題、生活保護受給など法的問題が複雑に絡み合っているケースが多く、全面解決には異業種の専門家の協力が不可欠。相談受け付けは来年四月以降で、一、二カ月に一度を考えている。当面は無料になるだろう。

 ―今後の構想は。

 センターへの信頼性を高めるためにも、二〇〇九年度までに国のADR(裁判外紛争解決)機関の認証を目指す。医療過誤紛争の場合、高度な医学的知識が必要となる場合もある。将来的には医学部との連携も模索したい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年12月15日 更新)

タグ: 医療・話題

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