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焦点 安全なお産守れ 福山市民病院の産婦人科休診問題 地域体制づくり急務 産科医師不足深刻浮き彫り

産婦人科が休診する福山市民病院。地域を挙げた安全なお産の体制づくりが問われている

 福山市民病院(同市蔵王町)の産婦人科に岡山大の医師派遣が継続できなくなり、4月から休診する問題は、全国的な産科医不足の深刻さを浮き彫りにした。井原や府中市内でも産科診療を取りやめる病院が出ている。地元医師会や県、市などでつくる福山・府中地域保健対策協議会(檜谷義美会長)は、医師集約化による対応に向け、話し合いを始めた。安全なお産をどう守り、医師の確保に努めていくか。国の対応とともに、地域を挙げた体制づくりが問われている。

 「若い医師が育っておらず、今のままでは五年、十年先に地域の産科医療は崩壊する」

 今月十九日、医師や行政関係者ら二十一人が出席した福山・府中地域保健対策協議会の会合。福山市民病院の産婦人科休診問題を話し合う初めての席で、ある開業医が危機感を訴えた。

 市民病院は重篤患者の緊急搬送を受け入れる三次救急施設であり、休診は極めて異例。地域に大きな波紋を広げた。


希望者が激減

 産科医の高齢化と後継者不足は深刻だ。県医療対策室によると県内でお産を取り扱っている病院と診療所は合わせて七十五施設。昨秋、同室が全施設を対象に行ったアンケートでは、「継続する意向がある」と答えた施設が六十三(84%)あった一方、今後の見込みでは「五年後まで」が十六施設(21・4%)、「十年後まで」を含めると二十八施設(37・3%)に上り、多くの医療機関がお産の取り扱いをやめる可能性をうかがわせた。

 背景には、二十四時間体制の過酷な勤務と、お産をめぐる医療過誤訴訟の増加がある。そのため、産科医希望の医学生は激減。県東部などに医師を派遣してきた岡山大医学部の産科婦人科学教室も、かつて毎年十人以上いた入局者が二〇〇七年はわずか二人になるなど、目立って減っている。

 同教室の平松祐司教授は「産科の集約化は避けては通れない。何も手を打たなければいずれ日本の産科医療がつぶれてしまう」と強調。医師の待遇やQOL(生活の質)の改善、分娩(ぶんべん)事故で障害児が生まれた場合、医師の過失がなくても患者に補償金を支払う「無過失補償制度」の必要性を訴える。


論議高まる

 福山・府中地域保健対策協議会の協議では、市民病院が担ってきた妊婦の緊急搬送は国立病院機構福山医療センター(同市沖野上町)が受け入れることになった。幸い、福山地域では通常分娩の約八割は民間病院で行われ、市民病院産婦人科休診の及ぼす影響は、最小限にできそうだ。

 関係者の中には「今回の問題が起きて、地域の医療体制について本気で話し合う機運が盛り上がった」という声もある。

 焦点は、今後の体制づくり。同協議会は、産科医集約化を見据えた会合を重ねると同時に、四月から救急業務が増加する医療センター産科医の過重労働を防ぐ対策も検討する。救急業務を、他の病院の産科医らが応援するシステムも考えられている。

 同協議会の檜谷会長は「将来は母体も赤ちゃんも救命できる総合母子保健センター(仮称)のような施設をつくりたい。コストが掛かり、スタッフを集めるのも大変だが、安全なお産ができるシステムを県東部全体で考えなければ」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年03月30日 更新)

タグ: 医療・話題

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