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障害者の生活 地域中心へどう移行 「自立支援法」施行1年 岡山でフォーラム

パネルディスカッションで、障害者が地域で暮らしやすい福祉のあり方を話し合う関係者

 施行から一年となる「障害者自立支援法」。利用者負担などさまざまな波紋を広げているが、障害者の生活の場を施設から地域中心へと転換する方針も掲げられている。岡山県内で障害者の地域生活を支援している「NPO法人ももたろうネットワーク」が岡山市内で開いた「第七回ももたろうフォーラム」では、地域移行の課題について意見を交換、当事者の声を反映させる体制づくりなどを探った。

 障害当事者、家族、自治体の担当者によるパネルディスカッション。岡山県の駒木賢司障害福祉課長は、二〇一一年度までに、県内の施設入所者のうち二百九十五人、退院可能な精神障害者千百人を地域移行するという重点目標を紹介。「施設から地域へ」という施策の流れを強調した。

 地域でより柔軟な制度の運用が欠かせないため、市町村の裁量が大きくなった自立支援法だが、半面、サービス提供に地域格差も見られた。

 脳性まひによる重度の身体障害があり、岡山市内で一人暮らしをする坂本啓治さんは昨年十月の全面施行直前に、ホームヘルパーの利用時間が月三百二十時間から七十七時間に激減する市の支給決定通知を見て驚いたことを報告。市長に要望書を出すなどして従前の水準まで戻したが、あくまで〇八年度までの「経過措置」で「将来、どうなるか分からない」と不安を訴えた。

 これに対し、岡山市の飯野孝司障害福祉課課長補佐はサービスの支給決定のあり方を問題提起した。

 「障害程度区分」を決めるためのコンピューターによる一次判定と審査会による二次判定までの事務プロセスは全国共通だが、個々の障害者にどれだけサービスを提供するかという「支給決定基準」は市町村に任されている。従前通り支給する市町村がある一方、岡山市は国庫負担基準額を基に決定。「基準額を参考にしないと支給が決まらない。慎重にならざるを得なかった」と話した。

 津山市の半田耕造社会福祉事務所障害福祉係主幹も、地域ごとに自由にサービス内容を決められる「地域生活支援事業」について「『地域格差をなくす』と言いながら、ある程度の補助金を出して『後はやりなさい』では、格差が生じるのでは」と疑問を呈した。

 問題を含みながらも地域福祉の推進を目指す自立支援法。基調講演した厚生労働省の高原伸幸障害福祉専門官は、相談支援事業と自立支援協議会の機能強化を強調した。

 相談支援事業は、障害者の生活に応じた福祉サービスの利用を援助したり、個別のケア計画を立てたりするのが役割。自立支援協議会は、地域の支援システムづくりをする場で、サービス事業者や当事者、行政だけでなく、企業や教育など幅広い関係者で組織する。

 ただ、具体的なノウハウのない地域もあるため、厚労省では先進地域からアドバイザーを招くことができる事業を新たに創設。「地域の中で生きたものとして活用してもらいたい」と訴えた。

 最後の提言で、ももたろうネットワークの中尾浩二朗代表は「今までは『言っても仕方がない』とあきらめていたことが、身近な地域で話し合い、新たなサービスを生むことができる。地域支援機能を高めていくことが大切」と締めくくった。


ズーム

 障害者自立支援法 昨年4月にサービスの利用者負担、同10月から新たなサービス体系が始まり、全面施行された。利用者負担が重過ぎることや事業所運営が厳しくなったことから、厚労省は昨年12月に特別対策を発表。利用者負担の上限を4分の1に下げるなどの改善策が新年度から実施される。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年03月31日 更新)

タグ: 福祉医療・話題

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