文字 

敗血症進行抑えるタンパク質特定 岡山大・西堀教授らのグループ

西堀正洋教授

 岡山大大学院の西堀正洋教授(薬理学)らの研究グループは、細菌やウイルスなどの感染症により全身の炎症や多臓器不全が起きる「敗血症」の進行を抑える血中のタンパク質をマウスで特定した。投与したマウスの生存率が劇的に上がっており、新たな治療薬の開発につながる成果として期待される。17日、記者会見して明らかにした。

 タンパク質は、肝臓で作られ、血漿(けっしょう)に含まれる「HRG」で、敗血症では濃度が低下していることを発見した。敗血症のマウスは通常5日以内に死ぬが、ヒトの血漿から精製したHRGを注射したところ、6日目も6割以上が生き残った。

 研究グループは、HRGには細菌を殺す「好中球」(白血球の一種)の形や質を保ったり、血管の内壁の良好な状態を維持したりして血の塊(血栓)ができるのを抑える働きがあることも解明。この働きが失われることで多臓器不全に至るメカニズムも突き止めた。

 研究グループによると、敗血症は重篤な全身疾患で、正確な統計はないが、世界で年間2千万~3千万人、国内で37万人が発症し、20~30%が死亡すると推計されている。これまでは抗生物質を投与する以外の治療法がなかった。

 西堀教授は「敗血症の複雑な発症メカニズムの一つを解明できた。抗生物質との併用が考えられる新治療薬の実用化に向け、臨床データの収集など研究を続けたい」と話している。成果は10日付の国際科学誌に発表した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2016年06月17日 更新)

タグ: 医療・話題

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ