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糖尿病性腎症 仕組みを解明 岡山大グループ 特定分子が関与

四方賢一准教授

片岡仁美助教

 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の四方賢一准教授(48)=腎・免疫・内分泌代謝内科学=と、同大医療教育統合開発センターの片岡仁美助教(34)=同=らのグループは、糖尿病三大合併症の一つである糖尿病性腎症の発症にかかわる分子を突き止めた。有効な治療法が確立されていない同腎症の治療薬開発への応用が期待される。

 米糖尿病学会誌に発表した。

 糖尿病性腎症は、血液をろ過し尿をつくる腎臓の毛細血管が高血糖下で炎症を起こし、腎機能が低下する病気。

 四方准教授らは、白血球の一種「マクロファージ」が高血糖で活性化し、腎臓に入り込んで炎症を起こすことを既に発見。どのような仕組みで炎症が起きるか詳しく調べたところ、「スカベンジャーレセプター」と呼ばれる分子を表面に多く発現したマクロファージが、腎臓に増えていることを突き止めた。

 この分子を発現しないよう操作したマウスでは、糖尿病を発病させても炎症が抑えられることを確認。スカベンジャーレセプターの働きで、マクロファージが腎臓に入り込んで炎症を引き起こすことが分かった。

 スカベンジャーレセプターは、血管が炎症を起こす動脈硬化に関与していることが知られており、同腎症も同じメカニズムが働いていることも判明した。

 糖尿病性腎症は、透析の原疾患の第一位。二〇〇五年末現在、国内で約二十五万七千人の透析患者の三分の一を占める。

 四方准教授は「スカベンジャーレセプターの機能を抑制する薬ができれば、糖尿病性腎症だけでなく動脈硬化にも有効だろう」と話している。


治療薬開発に期待

 鈴木芳樹・新潟大保健管理センター教授(腎臓病学・糖尿病学)の話 糖尿病性腎症の原因となる特定の分子を発見したことは意義深い。この分子の働きを抑える薬を開発することが同腎症の有効な治療薬となる可能性がある。今後の創薬研究にも影響を与えそうだ。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年05月08日 更新)

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