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手すり付きいす、車いす対応洗面台… 散髪もバリアフリー 高松の理容店主・山下さん 香川県福祉まちづくり賞に

メーカーに特注した理容いすを紹介する山下さん=高松市宮脇町

 高松市宮脇町の理容師山下博さん(58)が10年以上にわたり、高齢者や障害のある人が気軽に立ち寄れる理容店づくりを進めている。手すりの付いた理容いす、車いす対応の洗面台などを独自に開発。「遠慮なく気軽に散髪に来られる」と利用者から好評で、バリアフリー社会の先駆けとなる取り組みとして、今年3月には香川県福祉のまちづくり賞に選ばれた。

 香川県庁にほど近い高松市中心部にある「理容山下」。店内に入ると、山下さんがメーカーに依頼して作った理容いすが目に留まる。普通のいすに比べ若干サイズが大きいだけで、外観に違いはない。だが、高齢者や障害者に気配りした機能が盛り込まれている。

 足置きは左右に動き、乗り降りする際にじゃまにならない。右側にはつかまり棒を取り付け、立ち上がりが簡単。洗面台も左右に動き、車いすに乗ったまま洗髪できるなど随所に工夫が凝らされている。

 山下さんは約十年前、常連の高齢者らが理容いすの段差に苦労する姿を見て店のバリアフリー化を決意。障害者専用いすもあったが、「専用タイプでは垣根をつくってしまう」と考え、すべての人が共用できる設備を考案。メーカーに働きかけ、約半年かけて実用化にこぎ着けたという。

 高齢者や車いすの人が来店した際、以前は同伴の家族ら介助者が理容いすへの乗り降りなどを手伝っていたが、導入後は店のスタッフだけで対応できるようになった。

 受賞した県福祉のまちづくり賞は、個人事業者としては初。審査委員長の一級建築士岡敬郎さん(65)=同市仏生山町甲=は「高齢者施設や駅など公共施設のバリアフリー化は今や当然だが、“近所の店”でも進めることが地域の大きな出発点となる」と評価する。

 山下さんは香川県内の理容師仲間と「福祉理容を考える会」を結成し、バリアフリー店舗の普及を進めている。いすの改造費が一台当たり約五十万円かかるなど多額の費用を要するため、まだまだ歩みは遅いが、山下さんは「この取り組みがいつか当たり前のことになってほしい」と話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年05月16日 更新)

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