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妊婦無料健診の回数拡大 財政難で自治体二の足 岡山県内 国要請の5回程度 美作、矢掛のみ

胎児や母親の健康状態を診断する妊婦健診=岡山市内の病院

 少子化対策の一環として、国が本年度から市町村に求めている全妊婦対象の無料健診の回数拡大が遅れている。国は無料健診を二〇〇六年度までの二回から五回程度に増やすよう要請しているが、岡山県内でこれまでに実行しているのは美作市と矢掛町だけ。財政難からためらう自治体が多いためで、県は本年度中の拡大を促す方針だ。

 美作市は〇七年度当初予算に約千百万円を計上。四月からは二回だった無料健診を六回にした。前年度から約六百万円増となるが、「少子化対策として市独自に回数増を検討していたので、国の方針にスムーズに対応できた」(健康づくり推進課)とする。矢掛町は今月から三回を五回に拡大している。

 県健康対策課などによると、笠岡市が十月一日から五回に拡大する予定。奈義町は八月からの実施を目指している。瀬戸内市は、無料健診回数を四回にとどめたものの、六月定例市議会で予算案が可決されたのを受けて、四月にさかのぼって広げることを決めている。

 年度内に回数増へ対応するのは倉敷、井原、真庭、浅口、美咲の五市町。美咲町は無料分を十回にする方向で調整している。残り十七市町村が検討中だ。

 二の足を踏む市町村が多いのは、実施するかどうかは市町村に委ねられているため。国からの予算配分は、他の施策経費も含んだ「子育て支援事業」として地方交付税で措置されるが、特に妊婦健診としての配分額が決まっているわけではない。自治体からは「地方交付税全体が減っている。予算を付けたといわれても実感がない。厳しい財政状況の中で、すぐに対応できない」といった声も聞かれる。

 無料健診は〇六年度、四回の新庄村が最多だった。新見、瀬戸内、早島、矢掛の四市町が三回で、残り二十二市町村は二回だけ。

 岡山市は、無料健診を二回から五回にした場合、一億二千万円程度の負担増になると試算。「無料回数を増やす方向で検討しているが、費用の問題もあり、他の市町村の動向も見ながら実施時期を見極めたい」(保健管理課)という。

 総務省は「全国に配分する子育て支援事業費を前年度の三百三十億円から七百億円に増やした。増額分の取り組み事例として妊婦健診助成の拡充などを挙げている」(調整課)と説明。厚生労働省も「配分が増えた中での対応をお願いしている」(母子保健課)と、強制はしないものの、回数増を求める。

 県健康対策課は「有料なら一回六千五百円程度の自己負担が必要なため、無料分しか健診を受けない妊婦もいる。回数が少なければ出産時などのハイリスクに結びつく。五回に拡大してもらえるよう県としても努力したい」としている。


ズーム
 妊婦健診 胎児や母親の健康状態を診断するために実施。厚生労働省によると、出産までに通常の場合で14回程度の受診が望ましいとされるが、全国市町村の無料健診は平均2回程度でとどまっている。自己負担額は10万円前後になるとみられ、中には経済的理由で受診しない妊婦もいることから、同省は今年1月、最低限必要な健診を五回とし、各都道府県に市町村への徹底を通知した。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年07月06日 更新)

タグ: 健康女性医療・話題

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