文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 小児特有疾患でも高額な薬一生… 成人後も助成継続を 胆道閉鎖症で肝移植 井本千恵美さん(福山) 助成打ち切りから1年

小児特有疾患でも高額な薬一生… 成人後も助成継続を 胆道閉鎖症で肝移植 井本千恵美さん(福山) 助成打ち切りから1年

千恵美さんの写真をバックに、成人した胆道閉鎖症患者への公的助成を訴える井本希久二さん=福山市

 1989年に胆道閉鎖症で脳死肝移植を受けた福山市清水ケ丘、中国短大2年井本千恵美さん(20)が、満20歳を機に医療費の公的助成を打ち切られ、5日で1年を迎える。移植患者は拒絶反応を防ぐ高額な免疫抑制剤の服用が生涯欠かせないが、助成は小児しか対象でないためだ。患者・家族の多くは先行きの不安を抱えており、父親の希久二さん(60)は「娘が健康で自活できる保障はない。何とか助成の道を」と訴えている。

 千恵美さんは生後間もなく、肝臓と十二指腸をつなぐ胆道が機能せず胆汁が流れない胆道閉鎖症と診断。移植しか助かる道がなく、当時国内では実施されていなかったため、二歳の時に豪州に渡り手術を受けた。手術後の経過は良好で二〇〇五年、保育士を目指して短大に進んだ。

 小児に特有の胆道閉鎖症は、国と県などが医療費をまかなう小児慢性特定疾患制度の対象になっており、千恵美さんの場合、これまで月二十数万円かかる薬代は全額助成。しかし、成人後は、健康保険の三割負担分七万二千五百円を毎月支払っている。

 このため、希久二さんは現在四十五疾患を対象に助成している国と県の特定疾患制度の適用を要望。打ち切り前後の昨年七―十月に計三回、広島県に申請したが「(胆道閉鎖症は)制度の対象外」と退けられた。

 打ち切りは井本さんだけでなく、全国の患者・家族を悩ませている問題だ。「胆道閉鎖症の子どもを守る会」(本部・東京)は、特定疾患制度の適用を求める運動を十年以上続け、約五万人の署名を集めて厚生労働省に提出している。

 患者約千二百人が参加する同会によると、二十歳に達した約三百人のうち、少なくとも四割が移植患者だという。杉本紀子代表は「成人しても就職できない例も多く、親も高齢化する一方。高額の医療費をどう捻出(ねんしゅつ)すればよいのか」と頭を抱える。

 だが、国の壁は厚い。厚労省疾病対策課は「特定疾患の対象は、治療法が確立されていない病気。胆道閉鎖症は移植という治療法があり、対象に含まれる可能性は極めて低い」とし、移植後の患者の高額負担の解消とは別問題との立場をとる。

 広島県によると、各都道府県の保健福祉担当部長でつくる全国衛生部長会が、患者らの救済を目的に小児慢性特定疾患制度の年齢上限引き上げを厚生労働省に求めている。

 千恵美さんは、昨年九月に拒絶反応の兆候が現れ、入院。短大も休学し、一時は再移植も検討された。同年末に退院したが、今年四月から二カ月間、肝機能の悪化で再入院した。

 体調は次第に回復。現在は自宅で家事を手伝ったり趣味の手芸に取り組み、秋からの復学を目指している。

 「健康を取り戻す臓器移植は“バラ色”ではあるが、その後の患者と家族には大きな不安がつきまとうことを国は分かってほしい」。希久二さんはそう話す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年08月03日 更新)

タグ: 健康女性子供医療・話題

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ