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医療の平等ほころび… 国保料払えず受診控え増 岡山、広島、香川 “滞納制裁” 一時全額負担ネック

保険料の分納などを呼び掛けている岡山市の国民健康保険課。滞納者の受診抑制を避けるためにも、生活実態を知る努力が自治体に求められている

 国民健康保険の保険料を払えず、医療機関の受診を控える人が岡山、広島、香川県で増えている。長期滞納者に対し、窓口でいったん医療費を全額自己負担させる制度が導入されたことなどが大きな要因。受診の遅れから死亡に至ったケースも報告され、誰でも平等に医療を受けられる国民皆保険制度のほころびを指摘する声も出ている。

 昨年十月、岡山市の総合病院で、五十代の男性が胃潰瘍(かいよう)による出血性ショックで死亡した。男性は職場を転々とし、当時、国保に入っていなかった。以前にも骨折でこの病院に入院したが、その治療費も未払いのままだった。

 昨年七月には、五十代の男性が倉敷市の病院に救急車で搬送されたが、肺炎と脱水症状で翌日に死亡。男性は数年前にリストラで職を失い、国保料を滞納し受診していなかった。

全国で29人死亡

 全日本民主医療機関連合会(民医連、東京)の調査では、二〇〇五年一月から今年二月までの約二年間で、国保未加入などによって受診が遅れた結果、岡山五人、広島四人など全国で計二十九人が死亡したとしている。

 民医連に加盟していない岡山市内の総合病院も「無保険で救急車で搬送されてくる人が毎月二、三人はいる」と言い、岡山県民医連は「悲惨な事例はまだまだ埋もれているはず」とみる。

 国は、保険料の滞納対策として二〇〇〇年に国民健康保険法を改正。一年以上の滞納者に保険証を返還させ、制裁措置として「被保険者資格証明書」の交付を市町村に義務付けた。

 資格証明書で受診すると、窓口でいったん全額を払わなければならない。後で保険負担分は払い戻してもらえるが、窓口での負担額の大きさから、証明書を交付された人の受診抑制が進んだとみられている。

 全国保険医団体連合会(東京)の調査(〇五年度)では、資格証明書を交付された人の受診率は一般の国保加入者に比べ広島で三十三分の一、香川では百六十六分の一にとどまっているという。

行政“縁切り”

 資格証明書の岡山県内の交付数(昨年六月現在)は二千五百九世帯で前年比36%増。倉敷市が千四十世帯、岡山市が六百八世帯、笠岡市が百五十五世帯などで、総社、高梁市などはゼロだった。

 医療機関に勤務し、患者と接触するソーシャルワーカーの多くは「リストラや倒産などによって生活が困窮した働き盛り世帯が資格証明書の交付を受けているケースが多いのでは」と推測する。

 資格証明書の交付については「行政による縁切り宣言」ともいわれる一方で、岡山市のように滞納者に有効期間六カ月の短期保険証を交付し、分納などを呼び掛けた上で、それでも全く応じない人に資格証明書を送っている自治体もある。

 医療制度に詳しい川崎医療福祉大(倉敷市松島)の小池将文副学長(社会政策)は「受診を控える人を少しでも減らすためには、自治体が滞納者と接触し保険料の減免制度や分納があることをもっとPRする努力も必要では」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年08月27日 更新)

タグ: 医療・話題

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