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岡山県内の妊婦無料健診 回数拡大は17市町 国要請で本年度 財政難で見送りも

岡山県内市町村の妊婦健診無料回数(表)

 少子化対策で国が自治体に求めていた妊婦の無料健診の拡大に応じたのは、岡山県内二十七市町村のうち十七市町にとどまることが県のまとめで分かった。拡大したケースでは、妊婦一人につき二回だった無料健診の回数を五回に増やした自治体が多いが、財政難などを理由に二回のままの自治体が八市町村に上る。

 最多は美咲町の十回。一年以上居住している妊婦(配偶者でも可)に限った条件付きながら、従来の二回から大幅増とし、県内でも突出した(一年未満居住者は五回)。次いで美作市の六回(従来二回)が多い。

 美咲町の対象者は、昨年度の場合約百二十人おり、最大で約六百万円の負担増になると推計する。「重点施策に少子化対策を掲げており、拡大するなら妊婦健診の大半をカバーできた方がいいと判断した」という。

 小さな自治体は機敏な対応が比較的可能だが、対象者が多い大規模自治体は難しい面もある。

 岡山市は本年度中の拡大を見送った。対象は年間七千―六千五百人とみられ、無料回数を五回にすれば最大一億三千万円の負担増になる。同市保健管理課は「それだけの負担ができる財政状況にない」としながら、来年度の実施を模索する。

 ただ倉敷市は、五千八百万円の補正予算を付けて、十月から回数を二回から五回に拡大した。約四千二百人を対象に見込む。同市保健所は「安くはないが、全国的に妊婦のたらい回しが問題になる中、無料回数が増えれば、その分リスクは軽減される」と話す。

 拡大の予算措置として国は、地方交付税の増額で対応した。他の施策も含めた「子育て支援事業費」を、全国枠で昨年度の約三百三十億円から約七百億円に増やした。

 しかし、実際に各市町村への配分がいくら増えたかは分からず、無料回数を増やしたからといって増額される仕組みでもないため、自治体が無料健診を拡大する誘因には必ずしもなっていない。

 ある自治体からは「地方交付税全体が減っている中、本当に予算措置されているか分からない」との声も聞かれる。

 県健康対策課は「国の方針提示が今年一月と遅かったため、本年度中に対応できない市町村もあった。〇八年度中に全市町村が五回程度に拡大できるよう促したい」としている。


ズーム

 妊婦健診 胎児や母親の健康状態を診る。出産までに14回程度の受診が望ましいとされる。岡山県の場合、1回の健診費用は約6500円。経済的理由から無料分しか健診を受けない妊婦もおり、厚生労働省は今年1月、最低限必要な健診を5回とし、各都道府県に市町村への徹底を通知した。奈良県で8月に搬送先が見つからず救急車内で死産した妊婦は一度も健診を受けておらず、そのことが受け入れ先確保をいっそう難しくしたとみられている。8月現在、全国市町村の無料健診の平均は2・8回。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年11月09日 更新)

タグ: 健康医療・話題

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