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守れ災害時の透析患者 岡山県内で連携進む 県医師会「ネットワーク」構築 受け入れ情報共有

血液中の老廃物を除去するために、1日おきに必要な透析。災害時に患者を支える取り組みが県内で進む=岡山市

 東南海・南海地震などの災害で医療機関が被災した際に、腎機能が低下した人工透析患者を守る態勢づくりが岡山県内で進んでいる。患者に必要な治療が中断されないよう、関係施設が連携して受け入れネットワークを構築。増加の一途をたどり、高齢化が進む患者サイドでも、不測の事態に備える意識が高まっている。

 約三百四十人の患者を抱える県内最大の透析施設・重井医学研究所付属病院(岡山市山田)。透析に一日八十―五十トンの水を要するため、専用タンク二基(計約七十トン)は常に満水で、非常時には敷地内の井戸から一日約二十トンが供給される。停電に備え自家発電装置を設けたほか、必要な薬も備蓄。「災害発生から三日は、支援が断たれても持ちこたえられる」とする。

 ただ、病院自体が被害を受け透析が施せなくなる場合には、患者は別の施設に移らねばならない。実際、一九九五年の阪神大震災では、約千七百人の患者が大阪など被災地以外での透析を余儀なくされたという。

水と電力不可欠

 透析は、患者の血液を体外の専用機械に送って老廃物を除去した後、体内に戻す。一日おきに治療が必要で一回四、五時間掛かる。除去で使う透析液を作る時に一回当たり百五十―百二十リットルの水を要する上、専用機械を動かす電力の維持が欠かせない。

 このため、阪神大震災を教訓に県医師会透析医部会が築いたのが「災害情報ネットワーク」。災害発生時に、県内約六十の全透析施設がパソコンを通じて、施設の被災状況、患者受け入れ要請と引き受け可能人数、必要な支援物資の有無などの情報が共有できるシステムだ。透析を行うことができなくなった施設は、代替施設を検索して患者に伝える。

 ネットワークは今年五月、岡山市中心部で水道管が破裂した時に稼働。実際の転院こそなかったが、患者受け入れをめぐり情報交換した。

 ネットワークには広島、鳥取など岡山以外の中国四県の全透析施設も参加しており、同部会災害対策委員長の笛木久雄医師は「仮に県西部で透析ができなくなっても、隣接する福山圏域の施設に支援要請できる。県を超えた協力態勢が強み」とする。

目立つ高齢化

 日本透析医学会によると、国内の透析患者は年間一万人ずつ増えており二〇〇六年末現在で約二十六万人。県内では約四千人に達する。全国的にも患者の高齢化が進み、多くが六十歳代半ばともいわれる。

 こうした状況を背景に、患者側からも災害時に備える動きが表れている。透析患者らでつくる県腎臓病協議会は十日、災害を想定した初の集会となる「防災フォーラム」を倉敷市有城の山陽ハイツで開催。県内透析施設が取り組む災害対策が紹介されるほか、神戸市の透析患者森本幸子さん(45)が、阪神大震災の体験を基に心構えを話す。

 同協議会は「災害時の危機管理を医療機関に任せきりにするのでなく、自分の命は自分で守る意識を高めたい」としている。

 フォーラムは午後二時からで入場無料。問い合わせは同協議会(086―231―1916)。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年11月09日 更新)

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