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医療費未払い深刻 生活難やモラル低下 岡山、広島、香川 病院経営圧迫懸念 悪質滞納は訴訟も

 医療費の患者の未払いが増え続けている。経済的困窮やモラル低下などが理由だが、岡山、広島、香川県内の病院でも対策に苦慮。「経営の圧迫につながりかねない」として、分割など患者が支払いやすい措置を講じる一方で、悪質な滞納には法的手段を取るケースも出てきた。

 「生活費を削って支払う人に厳しい対応はできないが、すべてを放置すれば病院運営に支障が出る」。国立病院機構岡山医療センターの担当者は、膨らむ医療費の未払いに表情を曇らせる。同センターの未払い金累積額は九月現在で六千四百四十八万円。前年同期より五百二十五万円増えた。

 岡山市立市民病院では累積額が六千七百八十二万円(九月現在)、前年より二百八十九万円増。県精神科医療センターも四千三百八十二万円(五月現在)で、毎年約三百万円ずつ加算されている。

 九月に堺市の病院職員が約七年入院していた男性患者を公園に置き去りにしていた問題でも、入院費約百八十五万円の未払いなどが背景にあったとされる。

1施設716万円

 医療制度改革に伴う患者の医療費負担増や低所得世帯の拡大などを受け、未払い問題はここ数年、深刻な状況になっている。

 全日本病院協会など四つの病院団体は、全国五千五百七十施設を対象に二〇〇四年度分調査(回収率58・8%)を実施。その結果、90%の施設で未払い金が発生し、総額は二百十八億九千四百十三万円であることが分かった。一施設の平均は七百十六万円に上った。

 都道府県別では、岡山県は三億四千百六十九万円(五十施設)、広島県は三億七千九百九十一万円(七十六施設)、香川県は一億六千八百八十四万円(二十九施設)だった。

 厚生労働省は「額が大きく、病院の健全経営の上で見過ごせない」として六月、病院関係者や大学教授らによる検討会を立ち上げ、実態把握に乗り出した。

拒めないが…

 各病院では、滞納を少しでも減らすために分割払いを認めたり、高額療養費など適用可能な制度の申請を勧めることで、未払い金の解消に努める。

 一方で、「治療を受けたのに治らないと言い張り支払いを免れようとする」(岡山県南の民間病院)、「点滴をしていたら勝手にいなくなっていた」(岡山市の公立病院)など、患者のモラルに疑問符が付くケースも少なくない。

 国立病院機構岡山医療センターは昨年春、退院後も支払いを延滞する患者二人を相手取り、出産費用計六十八万円を求める初の少額訴訟に踏みきり、いずれも勝訴した。「電話や文書、訪問により再三催促したが、応じてくれなかったり連絡が取れなかったりと、支払いへの誠意が感じられなかった」と同センターは説明する。

 岡山県病院協会長の土井章弘岡山旭東病院長は「医師法の定めで、どんな患者でも診療を拒むことはできない」と前置きしながら、「お金がなくて支払えない、というだけでなく、払いたくないという患者が確実に増加している。未払い金が各病院にとってさらに深刻な状況になれば、協会として対策などを考える必要がある」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月03日 更新)

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