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認知症終末期ケア 早期に意思確認を 「家族の会」顧問・三宅貴夫医師(倉敷市出身)が講演

認知症高齢者の終末期ケアについて講演する三宅医師

 認知症のお年寄りが終末期を迎えた時、ケアをどこまで行うか、家族は思い悩む。この病に詳しい「認知症の人と家族の会」(京都市)顧問の三宅貴夫医師=倉敷市出身=が十二月中旬、赤磐市で講演し「認知症の終末期ケアの難しさは本人の意思がほとんど確認できないことにある。早い時期に認知症であることを本人に告げ確認しておく必要がある」と訴えた。

 三宅医師はまず、認知症の終末期について「まだ広く認められた定義がない」と指摘し、独自の判断基準を示した。

 終末期に至る進行性の認知症の典型として挙げたのがアルツハイマー病。記憶障害など精神症状だけでなく、飲食物をのみ込めない嚥下(えんげ)障害など神経症状が進み、通常は発症から七年~十数年で最重度になるという。

 嚥下障害があっても、おなかに開けた穴から胃に栄養と水分を補給する胃ろうなど、近年広まった医療技術で延命はできる。そこで、三宅医師は終末期を「ここでみとるか、さらに延命を試みるか、一つの節目になる」と位置づけた。

 ただ、認知症の告知が本人に酷とされる日本では、三宅医師が訴える早期の意思確認はできない場合が多いようだ。胃ろうを行うかどうかなど、本人に代わり判断を求められる家族の間でも考えが一致しないことがある。

 「同居家族に限らず本人の気持ちを一番代弁できる人に医師は聞くべきだ。介護、医療職の考えもできるだけ統一しておく必要がある」と三宅医師。さらに、意思決定の過程と内容が妥当か、後で判断できるようにカルテや介護記録など文書に残すよう促した。

 終末期は本人はもちろん、家族も、医療・介護関係者もつらい。高齢者が亡くなった後も、家族が「胃ろうをしたのが、本人のために良かったのか。逆に苦しめたのではないか」と自問自答を繰り返すケースが珍しくないという。三宅医師は「死後の家族のサポートは忘れられがち。併せて、介護職自身のケアも必要だ」と呼び掛けた。

 講演は岡山県介護支援専門員協会東備支部の認知症研修会で行い、ケアマネジャーや介護家族ら約百七十人が聴き入った。


認知症の終末期の定義(狭義)

①進行性の認知症

②意思疎通が困難

③認知症の原因疾患に伴い、嚥下(えんげ=のみ込み)が困難

④①~③が元に戻らない

広義の認知症の終末期は「治らない認知症で、がんなど認知症と直接関係ない疾患で終末期状態」が加わる

 (三宅医師による)


 みやけ・よしお 朝日高、京都大卒業後、旧厚生省、京都府勤務をへて、同府内の病院などで診療。2003年から京都保健会盛林診療所長。1980年、呆(ぼ)け老人をかかえる家族の会(現・認知症の人と家族の会)の結成に参加。2004年、京都で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議では事務局長を務めた。62歳。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2007年12月30日 更新)

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