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「携帯で遠隔医療」実証実験  岡山大と高梁・川上診療所 中山間の患者支援

携帯電話からパソコンに送られてきた患者の画像をチェックする川上診療所のスタッフ

 岡山大病院総合患者支援センター(岡山市鹿田町)は高梁市川上診療所(同市川上町地頭)と連携し、テレビ電話機能付き携帯電話を使った遠隔医療の実証実験に取り組んでいる。中山間地で暮らす高齢患者の在宅療養を画像を交えた対話によって支える試みで、患者や介護者の不安軽減につながっている。

 総務省の「戦略的情報通信研究開発推進制度」採択を受け、岡山大を中心とする産官学グループが二〇〇六年度から〇八年度まで進めている遠隔医療研究の一環。

 〇六年七月から同診療所が高梁市川上、備中町地区の高齢患者ら十人に携帯電話を貸与。内蔵カメラからの映像を岡山情報ハイウェイ、市の光ファイバー網を経由して、診療所に設置したテレビ電話会議システムに送信。パソコンの画面に映し出された患者の動画を見ながら、医師や看護師が体調などを問いかけ、治療方針の参考にしている。

 患者の多くは脳梗塞(こうそく)の後遺症や慢性呼吸不全、がんなどで重症にもかかわらず、在宅治療を選んでいる。昨年七月に膵臓(すいぞう)がんが判明した川上町地区の男性(84)もそうした一人。介護に当たる長女(60)は「なじみの看護師が毎日顔色などをチェックしてくれるので、父も安心している。『生まれ育った家で暮らし続けたい』という思いの支えになる」と話す。

 合併前の旧川上町時代から社会福祉法人・旭川荘(岡山市祇園地先)が指定管理者となっている同診療所は、休日・夜間の往診などで末期患者の在宅緩和ケアに取り組んできた。携帯電話を使ったシステムは患者が独り暮らしや、介護者も高齢の場合に有用といい、菅原英次所長は「往診や訪問看護では埋めきれない不安・孤独感をカバーできる。資源の少ない中山間地の医療の質向上にも役立つ」と期待する。

 ただ、高齢者の中には携帯電話の操作が難しいケースや、谷間で電波が届かない場所もあるなど課題も少なくない。このため研究グループでは今後、専用端末の開発をメーカーに呼び掛ける方針。また、診断に必要な高精度の静止画像を、医師側の遠隔操作で簡単に得ることのできる撮影機器の開発も進めている。

 研究代表者の岡田宏基・岡山大総合患者支援センター副センター長は「岡山県は情報ハイウェイなどの通信インフラが整っており、遠隔医療が進む可能性は高い。中山間地や島しょ部で深刻化する専門医の不足を補うシステムにしたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年01月01日 更新)

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