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産科遠いと帝王切開増 南厚北薄”顕著に 解説 求められる地域偏在解消 

 自宅から産科までの距離が遠いほど帝王切開の割合が高いという今回の調査は、妊婦や産科医が抱える不安の大きさの裏返しと言える。分娩施設の少ない地域では多くの妊婦が精神的、肉体的なリスクを強いられている格好だ。

 岡山県内では分娩施設の約七割が岡山、倉敷市の県南に集中する。岡山理科大の関明彦教授(公衆衛生学)が厚生労働省の統計をもとに調べた岡山県内の産科施設(分娩を取り扱わない施設含む)は、一九九六年の百十八カ所が二〇〇五年は八十三カ所に減少。減少率は岡山市の15・8%に比べ同市以外は38・4%と大きく、“南厚北薄”が一層顕著になった。

 全国的には、過酷な勤務実態や医療過誤訴訟の増加などで産科医・施設不足が深刻化。岡山県は他県ほど危機的状況にはないとされる。

 それでも、地元で出産できない“空白地域”は美作、備前市など十七市町村。高度な医療に対応できる「周産期母子医療センター」は県内六カ所のうち岡山、倉敷市以外は一カ所(津山市)しか整備されていない。

 二〇〇四年に始まった医師臨床研修制度以降、大学から地方病院への医師派遣が減り、地域偏在には一層拍車がかかる恐れもある。「安心して子どもを産み、育てる」社会の実現には、妊婦の不安を解消していく全県的な取り組みが急がれる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年01月24日 更新)

タグ: 医療・話題

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